研究課題/領域番号 |
20H01566
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上村 泰裕 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70334266)
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研究分担者 |
福井 康貴 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20712839)
仲 修平 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (60732401)
竹内 麻貴 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (70802106)
白波瀬 達也 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (40612924)
下平 好博 明星大学, 人文学部, 教授 (40235685)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インフォーマル雇用 / 社会政策 / デジタル経済 / 福祉国家 |
研究実績の概要 |
デジタル経済の到来とともに雇用が再びインフォーマル化しつつあると言われる状況をふまえて、仕事と福祉の結び直しに向けた社会政策の規範をいかに構想できるか。本研究はこの問いに答えようとするものである。デジタル経済の到来は20世紀型の福祉国家が前提としていた仕事と福祉の結びつきを切り離す可能性があり、その徴候はすでに新たなインフォーマル雇用として表われている。本研究では、福祉社会学・家族社会学・産業社会学・経済社会学・社会階層論を専門とする研究者が協働し、理論と調査、歴史比較、国際比較、政策分析を統合する形でインフォーマル雇用の研究に取り組んでいる。 本年度は、コロナ禍の影響で共同研究プロジェクトの開始が遅れたが、2020年8月からは定期的にオンライン研究会を開催し、充実した討議を通じて具体的な調査課題を洗い出すことに努めた。さらに、2021年2月には「自営業者・フリーランスの働き方と生活に関する全国調査」(サンプルサイズ:自営業5,800,正規雇用1,100,非正規雇用1,100)と題するウェブ調査を実施した。 本年度の研究実績の実質的要点としては、①コロナ禍という新たな事態のなかで、多様なインフォーマル性を抱えた労働者が直面する困難のタイムリーな把握に努めたこと、②社会政策の網の目から零れ落ちるという否定的側面だけでなく、インフォーマル雇用の多面性を捉える視点の必要に気づいたこと、③改めてインフォーマル雇用の概念を鍛え直す方向性を模索し始めたこと、が挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)以下の5回の研究会を開催した。全メンバーがそれぞれの立場からインフォーマル雇用を社会学的に捉える視点を提示し、メンバー間で活発な討論を行なった。第1回研究会(2020年8月10日、上村泰裕「インフォーマル雇用研究ノート」)、第2回研究会(2020年10月3日、鈴木恭子「労働市場における異質性・差異化・公平性」、仲修平「ウェブ調査に向けた調査票の設計」)、第3回研究会(2020年11月28日、仲修平「ウェブ調査に向けた調査票の設計」)、第4回研究会(2021年1月9日、下平好博「インフォーマル雇用の歴史的展開」、白波瀬達也「あいりん地区の労働をめぐる諸課題――寄せ場の成立・発展・衰退の通時的考察」)、第5回研究会(2021年3月6日、竹内麻貴「ケアを担うことで生じるペナルティ」、福井康貴「インフォーマル雇用が問いかけるもの――社会階層論・社会政策・経済社会学」、仲修平「ウェブ調査の結果速報」)。
2)ウェブ調査の直前には、調査票の細部を検討する会議(2021年1月22日、2月6日)を開催した。調査は2021年2月18日から2月22日に、楽天インサイト株式会社に登録している25~69歳の男女モニター(対象者は18,515人。回収したサンプルは自営業5,800,正規雇用1,100,非正規雇用1,100)に対して実施した。
3)海外調査はコロナ禍のため延期せざるを得なかった。また、ほぼ同じメンバーの日印セミナー(日本学術振興会の二国間交流事業として、2021年3月にバンガロールのインド国立法科大学で開催予定だった)も2022年3月に延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行なった全メンバーの研究報告をふまえて調査課題を整理するとともに、ウェブ調査で得られたデータの分析を進める。さらに、延期になった海外調査や日印セミナーの準備も進める。
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