研究課題/領域番号 |
20H01577
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰彦 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (00634974)
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研究分担者 |
沼尾 波子 東洋大学, 国際学部, 教授 (10265936)
高木 竜輔 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (30512157)
金井 利之 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40214423)
山本 薫子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (70335777)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原発事故 / 地域社会 / 認識圏 |
研究実績の概要 |
本研究は、原発事故災害にともなう全域避難という特異な事態により、従前の地域社会から遊離し、観察可能なかたちで表出した認識レベルの地域社会(以下、「認識圏としての地域社会」)に着目し、「生活圏としての地域社会」が崩壊─再編されていくなかで、「認識圏としての地域社会」が遊離・変容・継承・再編されていく過程を規定する要因・構造を探求するものである。その際、全域避難かつ長期避難を強いられた福島県富岡町を中心的な調査対象とし、その復興過程を分析することによって、「認識圏としての地域社会」の原理的・動態的メカ ニズムを解明することとしている。今年度は、これまでの調査で得られた知見をもとに、下記のとおり調査研究をおこなった。 ①昨年度、被災者を対象として実施したアンケートの結果にかんして量的な分析を中心におこない、帰還者、避難者、転入者それぞれの実態について明らかにした。 ②その成果を、調査対象地域である福島県富岡町にて策定予定の「第3次復興計画」の検討に資するため、上記①から導出された結果について取りまとめ、政策検討資料として富岡町に提供した。 ③上記①の調査を通じて、補足的な質的調査に協力意向を持つ人たちに対して聞き取り調査をおこなうこととし、そのために、アンケート集計・分析結果から得られた知見を精査し、「帰還すること」「避難し続けること」「被災地とかかわりを持ち続けること」などについて、複数の理論仮説を検討・整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまではコロナ禍の影響により、アンケート調査の実施を延期せざるを得なかったなど、当初計画を円滑に進めることに支障もあったが、前年度に実施したアンケート調査から得られたデータを用いて、十分な分析をおこなうことができた。また、これら成果について学会報告などもおこうなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
原発事故後13年が経ち、かつ、2025年までに各種の支援が打ち切られる状況のなかで、被災者たちにとって、従来の「生活圏としての地域社会」と現在の「認識圏としての地域社会」がどのように影響し合いながら、継承・再編されてきているかについて、引き続き、その要因・構造に着目して探求していく。 その際、「地方消滅」など、地方衰退を巡る議論のなかで着目すべき「他出子」がそのライフコースのなかで、故郷と関わりを保ち続け、「通い」や「帰還」する際に作用すると考えられる<Hold>作用や、原発事故後に生まれた<空間なきコミュニティ>といった新たな理論構築を目指すこととしたい。
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