研究実績の概要 |
非認知症高齢精神障害者に向けた福祉と医療の連携研究へ臨み, 2021年度は認知症者に訪問介護を行う事業所の訪問介護員等, ならびに認知症者へデイケアを行う介護老人保健施設の看護師等へ, 福祉職と医療職の連携における現況ならびに課題の聞き取りを行った. その結果, 以下を導いた. 非認知症高齢精神障害者に関し, 認知症者にもまして不安症やパーソナリティ障害 (地域ケアリング 23(4), 90-93 / 23(10), 68-75) の併存についての福祉職の理解と対応が重要であること, とくに相談にのりながら一緒に困難さを緩和し, 地域・在宅の生活のなかで回復を目指す姿勢の不可欠さを確認した. また, 専門職の視座から2020年度の発展的な論点であった累犯高齢者・知的障害者支援における, 社会福祉士の関与と独立性にふれた (ソーシャルワーカー 20, 41-50). 近年のソーシャルワークがコロナ禍のもと対個人に終始するなか, ミクロに収斂させずマクロにも傾倒しない医療機関内 / 機関間をまたぐメゾレベルの実践が, 福祉職と医療職の援助姿勢の違いを生かす形で連携に資すると考えられた (地域ケアリング 24(2), 40-44). さらに, 精神保健福祉士 (地域ケアリング 24(1), 48-53) や養護教諭 (日本養護教諭教育学会誌 25(2), 1-2) といった, より対象を明確化した専門職をとりまく多職種モデルが, 非認知症高齢精神障害者の在宅生活を支える福祉と医療の相互理解に寄与する可能性を認めた. 発展的な論点として, ここまで面接調査には新型コロナウイルス感染症の蔓延を背景にZoom等のクラウド型Web会議システムを用いてきたが, 質的研究にもたらすオンライン型と対面型の方法論上の異同を検討する必要性が見い出された (地域ケアリング 23(12), 64-70).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で概要を示した成果は, 科研費の申請に際し提出した計画におおむね従って, あるいはそこより発展的に獲得され, 計画の2年目として所期の目標をほぼ達成し得たものである. 今後さらに, 継続して面接調査や学会発表, 論文作成などを進めていく所存である.
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