研究課題/領域番号 |
20H01612
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
市川 創作 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00292516)
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研究分担者 |
小林 功 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (70425552)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食品 / 消化動態 / 胃腸消化シミュレーター / 栄養成分 / タンパク質 / 糖質 |
研究実績の概要 |
食品の消化過程では、消化酵素や酸による栄養成分の化学的消化と共に、咀嚼や消化管運動により食品粒子が微細化される物理的消化が行われる。テクスチャーが多様な固形食品では、物理的な消化特性や食品に含まれる栄養成分の存在状態により、同量の栄養成分を含む食品であっても、その消化動態が異なると予想される。本研究課題では、物理的及び化学的消化が評価できるin vitroヒト胃腸消化シミュレーターを使用し、食品に含まれる栄養成分の存在状態、及びテクスチャーと、栄養成分の消化動態の相関を系統的に明らかにすることを目的として研究を進めている。 三大栄養素の一つであるタンパク質のモデルとしてアルブミンを使用し、その消化挙動をヒトの胃における化学的および物理的な消化環境を模擬したin vitro消化シミュレーターにより評価した。その結果、アルブミンの変性・凝集状態を加熱および塩濃度条件により制御して、力学強度が異なるアルブミンタンパク質ゲルを調製すると、ゲル粒子からのタンパク質の消化・放出挙動が異なることが明らかになった。また、変性・凝集状態を制御したアルブミンタンパク質を力学強度が異なる寒天ゲル粒子に包含して消化シミュレーターにより消化挙動を評価した結果、ゲル粒子からのタンパク質の消化・放出挙動はゲル粒子の力学強度が支配的であることがわかった。これらの知見は、同量のタンパク質を含む固形食品でも、食品加工の過程で固形食品のテクスチャーやタンパク質の変性・凝集状態を制御することで、タンパク質の消化動態を制御できることを示唆している。 また、三大栄養素の一つである糖質を含む実食品として炊飯米を対象とし、その消化動態をin vitroで評価するための試験条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
糖質を主成分とする実食品の消化挙動評価試験を行う中で、当初の想定に反し、ヒトの口腔内消化を模擬する試験条件についてより的確に模擬できる条件の検討に時間を要したため令和3(2021)年度の研究の一部を翌令和4(2022)年度に繰り越して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
固形の実食品から三大栄養素を含む代表的な固形食品を選び、ヒト胃小腸消化シミュレーターで消化試験を行うことで、実食品に含まれる栄養成分の消化動態を評価する。具体的には、前年度に検討をはじめた糖質を多く含む実食品である炊飯米を対象とし、その消化動態をin vitroで評価する。消化実験では、消化液のpHなどの消化条件が消化挙動に影響することが予想されるため、in vitro消化の実験条件を適切に設定する検討を精緻に進める。適切なin vitro消化実験条件を設定した上で、炊飯米として白米と玄米の消化動態を評価し比較検討する。また、白米飯と玄米飯については、in vivoによる糖質の吸収特性が報告されており、その結果と本研究で実施するin vitro消化挙動の解析結果を比較検討する。これにより、in vivo試験のみでは講究が困難であった白米飯と玄米飯の消化動態と糖質の吸収特性の関係について解析を進める。 以上の研究により、固形食品のテクスチャーならびに栄養成分の存在状態と、消化動態の関係を系統的に評価し、これらの関係性を明らかにする研究を進める。また、得られる知見をもとに胃腸消化シミュレーターを利用した食品栄養成分の消化動態予測技術を開発し、消化・吸収性が制御された食品開発の指針を示す。
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