研究課題
近年照明装置の進歩等により、一般生活の住居空間における環境光が劇的に変化している。特に、特定波長の強い放射束の光(ナローバンド光)が比較的容易に利用できるようになり、ヒトの生活空間に共存している微生物等に影響を与えることが徐々に判明し、光環境の危険性が指摘されていると同時に、その有効利用の可能性も指摘されている。紫外線、可視光、赤外光は一般生活に密着した光であるが、すでに光の機能がわかっているとの意見もあり、新たな研究が行われていなかった。しかし発光ダイオードなど新しい光源の進歩により、まだまだ十分理解できていなかったことが判明してきた。我々の生活に密着している紫外線から近赤外に至る波長の光機能を十分に解し、その利点と欠点を整理することは、今後の光応用にとって基本であり、電子工学、微生物学、光応用科学の分野を統合した新しい医用応用工学が生み出されると考えられる。本研究では、新規の発光技術を用いた経済性及び環境負荷低い、居住空間に対する光照射方法をもちいて、光応用科学・微生物感染症学・電子工学を融合し一般生活空間を想定した環境中における微生物制御基盤の確立を目指した。このために、紫外から赤外に至る波長が、微生物に与える影響を解析し、病原微生物を含む微生物を制御する最適なシステムの開発を行うことを目標とし研究開発を行った。具体的には、①ナローバンド光による微生物応答機構の解析については、紫外線の生物応答について解析を行った。②光照射法の検討については、光照射デバイスの最適化については、表面殺菌と空気殺菌のおいて、各種光源の利点と欠点を検討しまた放熱対策についても検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の実験計画に沿い、①ナローバンド光による微生物応答機構の解析について、②光照射法の検討について、③安全性の検討についての3点を中心に解析を行った。①ナローバンド光による微生物応答機構の解析については、紫外線の生物応答について解析を行った。紫外線の効果については、殺菌や不活化機構に関して細菌についてはよく解析されている。そこで、ウイルスを中心に、一般的な紫外線の作用機構をもとに解析を行った。②光照射法の検討については、光照射デバイスの最適化について研究開発を行った。一般生活空間の微生物制御を考えた場合、表面殺菌と空気殺菌のおおきく2種の対象物が考えられる。この2種類についてそれぞれ光照射デバイスの最適化を検討した。光源としては、発光ダイオード(LED)、水銀発光管、有機LED、レーザダイオード等について検討を行った。特に発光時に生ずる熱は各デバイスの寿命等を短くする可能性が指摘されており、放熱対策についても検討を行った。③安全性の検討については、主に光照射による代謝への影響について検討を行った。各波長の光を培養細胞等に照射することにより、波長特異的に代謝活動が変化し一部の遺伝子発現も変化することを見出した。高橋は主に微生物への影響を解析するとともに研究を統括した。馬渡は主に安全性の解析を行った。芥川は主に光照射システムの開発を行った。各種学会での研究成果発表を計画していたが、コロナウイルス感染症蔓延などの社会的情勢のため学会が中止になったり出張等ができなくなったため発表を取りやめたざる負えなかった。以上より、研究はほぼ順調に進展している。
本研究は、最先端の光源技術を利用して、光を機能性環境因子として取り扱い、ヒトの居住空間に共生している環境微生物に与える影響を分子機構から明らかにし、環境の衛生管理に応用しようとする。これは今まで主流であった照明に関する研究から離れて、紫外から赤外に至る光により、生物機能を制御しようとするものである。紫外線、可視光、赤外光は一般生活に密着した光であるが、すでに光の機能がわかっているとの意見もあり、新たな研究が行われていなかった。しかし発光ダイオードなど新しい光源の進歩により、まだまだ十分理解できていなかったことが判明してきた。我々の生活に密着している紫外線から近赤外に至る波長の光機能を十分に理解し、その利点と欠点を整理することは、今後の光応用にとって基本であり、電子工学、微生物学、光応用科学の分野を統合した新しい医用応用工学が生み出されると考えられる。今後は、①ナローバンド光による微生物応答機構の解析、②光照射法の検討、③安全性の検討について検討を行っていく。研究成果は、学会等で発表していく予定であるが、コロナウイルス蔓延などの社会情勢に応じた対応をとっていく。
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