研究課題/領域番号 |
20H01618
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
長野 隆男 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (20304660)
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研究分担者 |
中井 雄治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (10321788)
矢野 博己 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20248272)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微粒子化 / 運動 / 腸内フローラ / メタボローム / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
本年度は、おからに含まれるタンパク質を低下と微粒子化に与える影響、高脂肪食肥満モデル動物実験系を用いた微粒子化おからの肥満抑制作用とそのメカニズムに関して成果を得ることができた。 1)おからには、20%のタンパク質が含まれていることからアルカリ処理によりおからの低タンパク質化を行った。その結果、タンパク質量は20.7%から2.4%に低下した。おからのタンパク質含量を下げることにより、微粒子化すると粘度は約2倍になることが示された。 2)高脂肪食肥満モデル動物実験系を用いて、調製した微粒子化おからの肥満抑制効果とそのメカニズムについて検討を行った。その結果、微粒子化おからの摂取群では、高脂肪食による体重と脂肪の蓄積が抑制され、耐糖能が改善することが示された。結腸便を試料として、腸内細菌叢の解析を行った結果、酪酸産生菌であるRuminococcus と乳酸菌である Lactobacillaceaが増加し、肥満と関する Rikenellaceae と Streptococcaceae の減少が観察された。盲腸便を試料として、短鎖脂肪酸の測定を行ったところ、酪酸が優位に増加した(p < 0.01)。血液を試料としてメタボローム解析を行ったところ、微粒子化低タンパク質おから摂取群で151種類の代謝物の増加が見られ、1次胆汁酸の生合成が増加することが考えられた。 以上のことから、アルカリ処理による低タンパク質化とナノファイバー化技術を用いて調製した微粒子化おからの肥満抑制効果が示された。そのメカニズムとして、腸内細菌叢の改善による酪酸産生の増加、胆汁酸の便としての排出の促進による胆汁酸の生合成の増加が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ナノファイバー化技術を用いておからとの微粒子化を行い、肥満モデル動物実験系を用いて微粒子化食品と運動による肥満抑制効果を検証する。これらを通じ、生活習慣病予防に役立つ知見を得ること、肥満抑制作用を高めた食品の開発を目標としている。本年度の研究で、1)おからの低タンパク質化により、粘度を高くできることを示すことができた。2)高脂肪食肥満モデル動物実験系を用いて、調製した微粒子化おからの肥満抑制効果を示すことができた。そのメカニズムとして、腸内細菌叢の改善による酪酸産生の増加、胆汁酸の結合能による便としての排出の促進による胆汁酸の生合成の増加することを示すことができた。3)運動との併用効果についても、動物実験は終了している。以上の成果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、最終年度であることから、これまでの研究を進め論文としての成果を目指す。 1)微粒子化おからによる肥満抑制効果についての研究は、論文作成中である。 2)微粒子化おからと運動の併用効果についての動物実験は終了している。体重の増加と脂肪蓄積の抑制、耐糖能を調べた。その結果、特に耐糖能について併用効果が見られた。現在、腸内細菌叢解析、短鎖脂肪酸測定、メタボローム解析、トランスクリプトーム解析を進めている。腸内細菌叢の解析では、結腸便を試料として16SリソソームRNAの遺伝子分析により行う。短鎖脂肪酸測定では、盲腸内容物を試料としてガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて測定する。運動によって酪酸が増加することが報告されていることから、運動の効果および微粒子化おからとの相乗作用を明らかにする。メタボローム解析では、血漿を試料として解析を行う。微粒子化おからの効果についての結果から、1次胆汁酸の合成が増加することが明らかとなった。代謝物の面から運動の効果および微粒子化おからとの相乗作用を明らかにする。トランスクリプトーム解析では、肝臓を試料としてDNAマイクロアレイを用いて測定を行う。1次胆汁酸の合成に関係している遺伝子を中心とした運動の効果および微粒子化おからとの相乗作用を明らかにする。
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