研究課題/領域番号 |
20H01643
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
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研究分担者 |
安部 保海 広島大学, 教育室, 研究員 (20531932)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
羽田 貴史 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 名誉教授 (90125790)
小林 信一 広島大学, 高等教育研究開発センター, 特任教授 (90186742)
渡邉 聡 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (90344845)
林 岳彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (90534157)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高等教育 / EBPM / 因果推論 / エビデンス |
研究実績の概要 |
2020年度は、先行研究の検討、データ収集、数理・データ分析を行い、経過や成果発信をオンラインにて展開した。先行研究の検討については、教育学系においてEBPMを批判的に検討している研究者集団と公開研究会を通じた議論を通じ、「エビデンス」の有用性を再確認しつつ、専門分野の文脈に応じたエビデンスの必要性、専門性を無視したエビデンスの危険性について確認することができた。また研究協力者の中尾走(JSPS特別研究員、DC2)により、高等教育におけるEBPMに関する歴史的動向が整理された(中尾 2020)。 データ収集・分析については、EBPMの核が因果推論にあることから、良質なデータ収集と分析方法の探求・卓越化と検証を進めることができた(中尾・樊・村澤 2021)。 また、研究分担者の小塩により、所得連動返還型奨学金制度(ICL)の経済学的特徴、日本版ICLの概要やその特徴、制度導入の効果の分析手法を整理するとともに、EBPMの観点も踏まえ、代表的な先行研究の結果が展望された。その結果、低所得の奨学生を支援することは社会的にも要請されるが,生涯所得ベースで見ると日本版ICLの再分配効果が総じて限定的であることが示された(小塩 2020)。 また、研究分担者の林により、エビデンスの社会利用におけるあるべき評価枠組みを検討され、「科学的エビデンスの政策利用」を考慮する上では少なくとも5つの不可欠な検討軸(1. Methodological rigorousness, 2. Consistency, 3. Proximity, 4. Social appropriateness, 5. Legitimacy)があり、さらにその各軸における検討内容が3つの学術的知識の制度化段階に依存して変化することを考慮する必要があることが示された(Kano and Hayashi 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍により、当初予定していた対面での研究会の開催が不可能となったが、代わりにオンラインを通じた研究会を精力的に展開できた(広島大学高等教育研究開発センター/高等教育研究資源ナショナルセンター開催:https://bit.ly/2RElh6M,本科研の支援による主催は5,6,7,8,10,17,20回)。これにより、研究の進捗状況を透明性高く発信すると当時に、一部は研究成果としても公開することができた(杉田・熊井・佐藤・長谷川・林・村澤 2020, 中尾・樊・村澤 2021など)。 また、研究協力者による関連する成果も順調に公開されており(小塩 2020, (Kano and Hayashi 2021など)、これらを総合的に判断し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に既出の成果については、2021年度に加筆修正を加えて査読付き英語誌への投稿を精力的に進めることにより、早々に成果の発信を進める。 また、先行研究の検討や、必要なデータの収集・整備および分析方法の探索と卓越化を2020年度に引き続いて行う。関連する研究会の開催については、引き続きコロナ禍が収まることを想定して対面方式を予定しているが、現況では困難であるので2020年度に引き続きオンラインを主として展開する。当初対面を想定して計上していた旅費については、コロナ禍の状況を見極めて随時英語誌投稿のための諸費用(翻訳、投稿料など)や、データ収集および分析のための費用に転換するなど柔軟に対応する予定である。
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