研究課題/領域番号 |
20H01663
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
笠間 浩幸 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (10194713)
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研究分担者 |
宗形 潤子 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (10757529)
真宮 美奈子 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (40310940)
竹井 史 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60226983)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 砂・土 / 砂場 / 園庭 / 粒度 / 粒度分布 / 子ども / 遊び / 保育 |
研究実績の概要 |
本研究は、保育活動の重要な基盤となる園庭環境について、そのもっとも基本的な構成要素である「砂・土」に焦点を当て、園庭への適切性を示す標準化を図ることを目的とする。園庭における「砂・土」とは、園庭表土、砂場の砂、築山の土、植栽の土等全般を指す。本研究では、これらの中から特に子どもの遊びや身体活動の場となる砂場、土場、泥場、築山等における「砂・土」を対象として研究を行う。これらの場所における「砂・土」は、粒度、粒形、粘性、保水性、湿潤密度、含有成分等の違いによって、子どもの遊びや保育活動に多大な影響を与えるものであることから、その選定は慎重かつ、十分に吟味がなされて行われるべきである。 これまで、砂場及び園庭の「砂・土」の状態については、感覚的・経験的な把握が主となっており、「砂・土」の明確な基準はなく、その質的な違いが保育に与える影響の度合いについても客観的な研究対象とはなってこなかった。そこで、本研究では科学的・工学的な「砂・土」の分析を通して、その物理的な質を把握することを目的とする。同時に、その「砂・土」の状態が、乳幼児期の子どもの遊びや活動に、どのような影響を与えるかについての実証的研究をもって、砂場や園庭にふさわしい「砂・土」の在り方を明らかにしていくことを大きな課題とする。 そのため、本年度の研究では、「粒度分布」の測定を通して、「砂・土」の特性把握を行うことが可能となる研究環境を整えることに専心した。「粒度」とは、土粒子の分布状態を表すものであり、横軸に粒径(粒の大きさ)、縦軸にその粒径より小さい粒子の質量百分率を粒径加積曲線として表すことができ(『土質試験 基本と手引き(2010)』)、これが、砂・土の可塑性や粘性(コンシステンシー)を決定するものであり、その正確な測定装置の設置と常時安定的な分析作業が可能となる研究室ブースを整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記した大きな研究の報告制に従い、まず研究環境を整える課題に取り組んだ。第1に砂の分析環境として、「電磁式篩振とう機(AS200コントロール)」、試験ふるい一式及び分析ソフト「JIS A 1204(粒径加積曲線)」の準備を整えた。第2に、土の分析環境として、「マイクロトラック粒子径分布測定装置MT3000II光学台」と「試料循環器/SDC」および分析専用パソコンの準備を整えた。加えて、これらの分析装置を常時安定的に操作可能とするための実験室を大学構内に設け、機器類及び什器の設置、電気系統の工事等をもって、研究環境を整備を完了することができた。 一方、本研究では、保育施設の訪問を実際に行い、具体的な子どもの遊びを観察するとともに、砂場及び園庭等の「砂・土」を試料として採取し、上記分析装置を用いて分析を行う予定であったが、このような研究計画は、ほぼ新型コロナウィルス感染症拡大予防のために実施することができないままに終わった。この点が、「進捗状況区分」における「やや遅れている」とした理由である。 一方、今年度は本学キャンパス内にある「砂・土」を実験試料として分析作業を行い、機器類の確かな操作手順を確認や、より正確な分析作業が可能となるよう研鑽に努めた。また、これまでの研究成果をより広く、かつ容易に保育・教育関係者らに理解可能となるような啓発コンテンツを作成し、翌年度の保育学会における「自主シンポジウム」での発表準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた本年度計画とともに新型コロナウィルス感染症防止対策によって取り組むことのできなかった活動も含めて、次のような研究の実施推進を図りたい。 ①砂場・園庭の「砂・土」環境の現状把握:東北地方の保育・教育施設における実態調査(「砂・土」環境、子どもの遊びや活動の様子、保育者・教師らへのインタビュー)を行うとともに、現地で採取した「砂・土」について粒度分析装置を用いての工学的分析を行う。 ②砂場・園庭にふさわしいと考えるモデル「砂・土」の分析と開発:①の分析に基づき、砂場・園庭に「適切」と考えられる「砂・土」のモデル仮説を複数設定する。この研究は、主たる研究代表者が所属する同志社女子大学構内にある砂場の一部を活用し、様々な粒度を持つ「砂」「シルト」「粘土」の混合割合を変えながらいくつかの仮説となる「砂・土」モデルを設定していくこととする。 ③モデル仮説となる「砂・土」の園庭・校庭等への導入とその効果の検証:②によって設定したモデル仮説となる複数の「砂・土」を、関西圏における保育・教育施設等に導入し、子どもへの影響や保育・教育の様子をとらえながら教育学的分析を行う。導入においては、保育者・教師らへのインタビュー調査を通して、保育・教育の検証を行うものとする。 なお、引き続き新型コロナウィルス感染症予防への措置を講じることが予想されることから、保育・教育現場における「砂・土」試料の確保については、現地取材にこだわらず、郵送等の方法も考慮しておくことが必要と考える。その際には、子どもの遊びや活動の様子について、可能な限り具体的な把握ができるようなアンケート調査を行うことも考えていきたい。また、これらの研究成果は、保育学会「自主シンポジウム」において公開し、ディスカッションを通してより内容の精緻化を図っていくものとする。
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