研究課題/領域番号 |
20H01663
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
笠間 浩幸 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (10194713)
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研究分担者 |
竹井 史 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60226983)
真宮 美奈子 同志社女子大学, 現代社会学部, 准教授 (40310940)
宗形 潤子 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (10757529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 砂・土 / 砂場 / 園庭 / 粒度 / 粒度分布 / 子ども / 遊び / 保育 |
研究実績の概要 |
第1に、「適切な粒度」の組み合わせによるモデル「土(粘土)」を構成し、京田辺市内の保育所にて実証研究を行った。具体的には、子どもの土遊びを活性化する土環境として開発したスーパークレイを、彫塑粉、珪砂(A3号、9号)との混合によって1t製作し、 研究園に設置した。今年度は、ねんど場の特性に触れる目的も兼ねて水分量を多くし、感覚遊びが可能な環境とした。年少児から年長児クラスの遊びについて、10日程度、半参与観察を行った。 第2に、東北地方(青森県六ケ所村)における砂の採取場及び八戸市内の私立幼稚園における砂場の砂の調査を行い、砂の粒度分布において95%以上の砂成分を持つ「砂」の導入とその効果を調査した。その結果、このような砂成分の「砂」が子どもの遊びに好影響を与えている実態が把握できた。さらに、中国地方(鳥取県倉吉市)における砂採取場及び鳥取市内の幼稚園についても調査をしたところ、青森県と同様の結果が得られた。 第3には、全国規模での砂場及び園庭の「砂・土」状況を把握するために、調査協力依頼を行う保育所・幼稚園のリストの作成を行った。全国を8ブロックに分け、各ブロック内において最も人口の多い県庁所在地を対象地として、各ブロック40園、合計320園のリストを作成し、アンケートの調査依頼を行った。その結果58園が調査に応じ、各園から砂場の砂約500cc、園庭中央部分及び土遊び用の「土」2種類各10cc程度の試料を入手することができた。コロナ禍で現地を訪問できなかったが、多くの試料を入手できたことは大きな成果であり、これは今後の粒度分析の対象となる。 第4は、日本保育学会にて「自主シンポジウム」を開催し、本研究成果の報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も新型コロナウィルス感染症対策のため、当初予定していた全国複数個所の保育施設訪問はできなかったものの、東北地方と中国地方の2か所の訪問が実施できた。この調査を通して、砂の状態と保育の実際を比較することができたことは、今後の研究の大きな参考となることから一定の成果が得られたと言える。 また、主たる研究者が所属する同志社女子大学近隣の保育所にて、モデル「土(粘土)場」の設置と子どもの遊び活動に関する継続観察からは、次のような成果を得ることができた。①スーパークレイを用いた「ねんど場」の設置によって、幼児が粘性や可塑性を生かした感覚遊びを実体験し、遊びの広がりを経験することが可能となった。②同時に、スーパークレイによる感覚遊びの参与観察を通じて、その素材自体が持つ粘性・可塑性について事例の収集・分析を行うことによって、造形あそびや造形遊びをもとにした集団的なごっこ遊びへの可能性を示唆することができた。 保育学会では、自主シンポジウム「園庭の『砂・土』環境から探る保育・教育の質的向上」をテーマに、報告及び意見交換を行った。具体的には、笠間が歴史・文化・社会的観点から「砂場から見る保育の今日的課題」、竹井が材料学的観点から「保育環境としての『砂・土』の意義と課題」、真宮が環境学的・保育学的観点から「園庭の『砂・土』環境と保育の質」、宗形が発達的観点から「砂遊びにおける保幼小連携の可能性」というテーマでの報告である。これらの報告を通して、幼少期の保育・教育の屋外環境に関して、その最も基本的な構成要素となる「砂・土」の物理的特性による重要な示唆を多くの保育関係者らに提供することができた。 また、全国8ブロックから58園と満遍なく、「砂・土」の試料を獲得できたことも大きな成果であり、今後、全国の砂・土環境において、工学的観点からの分析結果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず第1に、全国8ブロック58園の協力のもと入手することができた「砂・土」の試料の粒度分析を行い、「砂・土」のより精度の高い分析視点を明らかにする。「砂」領域では、砂分比率の観点からの分析とともに、特に「砂」分における「粗砂・中砂・細砂・微砂」のより詳細な分析もしていきたい。「土」については、粘土成分、微砂(シルト)、細砂のより精密な粒度分布について、分析をしていきたい。 第2は、58園から寄せられた保育者からのアンケート結果のより詳細な分析である。主なアンケート内容は、「砂・土」の遊び内容、遊び込みの程度、課題と考えていることなどである。この結果と各園の「砂・土」の粒度分布の結果をもとに、保育者の子どもの遊び環境の認識と工学的な分析との比較を行うことを通して、幼児教育のおける砂・土遊びの環境における課題を明らかにしていきたい。 第3は、「砂・土」モデルの詳細な分析を通して、「適切な粒度分布」を持つ「砂・土」の標準化案の設定への到達を目指す。そのためには、様々な粒度の砂・シルト・粘土の混合と時間経過による特性や質の変化を見る実験を複数回繰り返すことが必要である。 以上のような研究計画であるが、特に第3番目に関しては、一定の手間と時間を要するものであり、早期の着手と結果の把握に努めていきたい。
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