研究課題
新型コロナ感染拡大の影響により心理実験の実施が遅延していたが、参加承諾の得られた思春期協力者の心理実験並びに毛髪、脱落乳歯、家庭の水道水の回収を令和5年3月に終えることができた。また一部の試料を除き、思春期に回収した脱落乳歯と水道水の金属測定も3月までに終了した。胎・乳児期の金属暴露量の指標として脱落乳歯エナメル質中の金属濃度を用いて、子どもの幼児期及び学童期気質気質達への影響を因子の下位尺度も含めて解析を行った。その結果、あるパターンが見出された。外向性・高潮性(ES)因子尺度及びその下位尺度に関しては、毒性金属は正の、必須金属は負の有意な関連が多く見られ、例えば、アルミニウムはESや「強い刺激への快」との間に、またカドミウムは「活動性」との間に正の関係があった。一方必須元素のマンガンは衝動性と負の関係があった。反対にエフォートフル・コントロール(EC)因子尺度やその下位尺度はマグネシウム以外の必須金属と正の関連性が、アルミニウム以外の毒性金属、例えば鉛は知覚的敏感性とは負の関連性が見られた。この結果は幼児期毛髪中鉛との関連性と一貫していた。金属暴露量の安定性を検討するため、脱落乳歯中及び幼児期・学童期の毛髪中の同一金属濃度の間の関係を検討した。幼児期と学童期の毛髪中のナトリウム、アルミニウム、マンガン、銅、水銀、鉛の濃度は中程度の高さの相関値を示した。また、水銀濃度に関しては学童期の約半数の子どもの毛髪水銀濃度が1 micrograms per gramを超えていた。Al以外の金属は乳歯と毛髪中の同一金属量との間に有意な関係がなかったが、毛髪が金属と親和性の高いシステイン残基を含むケラチンを多く含むのに対して、乳歯の構成成分は殆どリン酸カルシウムであるため生体組織への金属の取り込みやすさが異なるため、また形成時期が違うためではないかと思われた。
3: やや遅れている
新型コロナ感染症の拡大による移動制限、また子どもや家族の感染、さらに保護者の職場での県外者との接触禁止等により、心理テスト実施は当初の予定より後にずれ込んだ。また、その遅れに伴って心理テスト協力者の年齢が上がったため、高校受験を控えた子どもの心理テストの日程調整が難航したことも、遅れが生じた一因である。そのため心理テスト時に回収予定の子どもの毛髪、脱落乳歯、家庭の水道水等の回収も遅れた。
脱落乳歯や水道水の金属濃度の測定は一部のサンプルを除いて終了したが、思春期の子どもの心理等の実験及びその際に行った毛髪、家庭の水道水の回収が終了したのは令和5年3月であるため、思春期子どもの毛髪中の金属濃度及び一部の家庭の水道水中金属濃度を測定する必要がある。心理・運動実験で得られた粗点の評価点への換算や、脳活動や実行機能のデータ化、及び紙面調査票回答入力をする。また、心理実験時に回収した食事調査票回答入力と子どもの栄養素摂取量推定値の算出を業者に委託する。上記の思春期データをこれまでの幼児期及び学童期の縦断データに連結し、子どもの気質、実行機能、脳活動、運動等への金属曝露並びに養育行動を含めた家庭環境の影響についての解析を進め、国内外で成果を発表する計画である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Environmental Research and Public Health
巻: 20 ページ: 1186~1186
10.3390/ijerph20021186