研究課題/領域番号 |
20H01676
|
研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
藤森 裕治 文教大学, 教育学部, 教授 (00313817)
|
研究分担者 |
秋田 喜代美 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (00242107)
山下 直 文教大学, 教育学部, 教授 (10736523)
徳井 厚子 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (40225751)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 汎用的言語能力 / 言語文化 / 幼小接続教育 / 国語科教育 / 日本語教育 |
研究実績の概要 |
【主目的】本研究の目的は、新教育課程への移行期を迎え、社会のグローバル化に対応した汎用的言語能力を言語文化の観点に基づいて措定し、これを育てるための実践理論を、幼児期から高校までの15年間にわたる言葉の教育という視座から開発して、学界・教育界・社会に発信することである。2020年度は本研究の開始年度であり、以下の3つの部門にかかる研究が行われた。 〔幼児教育部門〕乳幼児期の子供の言語獲得・言語発達にかかる研究文献のレビュー調査、また、近隣諸国における乳幼児期の教育政策の情報収集を行い、信州大学教育学部附属松本幼稚園等をフィールドとして、保育内容「言葉」領域にかかる実践の現地調査を行った。調査は研究カンファレンス(稲垣, 1985, 授業研究の歩み, 評論社)による事例研究法が方法論として採用された。 〔日本語教育部門〕幼少期の日本語教育における実践情報調査として、幼児期~小学校低学年期における日本語教育の実践研究にかかる著書・論文レビュー調査が行われた。また、日本語非母語話者である幼児を対象にして、複言語主義に立った汎用的言語能力育成に向けた実践開発と効果検証を行うための理論研究が行われ、論文等で発表した。 〔学校教育部門〕幼小接続において汎用的言語能力を育成するための実践開発として、これまでに調査研究を蓄積してきた国内外の初等学校における調査記録の整理と分析、また、関連文献調査が行われた。また、本研究のキーワードである「言語文化」について、学習指導要領における記述の変遷を調査・整理した。合わせて、長野県北佐久郡御代田町立御代田南小学校への長期にわたる民族誌的アプローチによる調査研究が行われ、小学校における汎用的言語能力の実態把握が行われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の蔓延による調査研究の遅滞が原因である。特に、予定されていた国外・国内の学校調査、及び国外の学会発表等については、渡航制限と協力校の学校閉鎖等によって不可能となり、国内でも現地訪問調査が著しく制約されてしまった。 特に、当該年度は幼児期から小学校期の教育実践場面を対象としていたため、感染予防への対応において非常にデリケートな配慮を要し、多彩な実践場面への調査研究を実現するまでには至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
如上の困難な状況はまだ払拭されていないが、それでも国内では研究協力に応じてくれる地方自治体・学校も現れ、徐々にフィールドワークができる環境となりつつある。さらに、英国では渡航制限が撤廃され、現地訪問調査が可能となる環境が整いつつある。 これらを踏まえ、今後は遅れているフィールドワークを進め、あわせて以下の方策をもって研究の推進につとめたい。 〈幼児教育部門〉保育・幼稚園教育と義務教育段階の学校教育との円滑な接続にとって、絵本読み聞かせ等を初めとする言葉の教育に求められる国・自治体レベルの取組について情報収集を行うとともに、現地での調査協力に積極的に応じてくれることが保証された信州大学教育学部附属松本幼稚園等の教育実践場面をフィールドとして、アクションリサーチの手法を用いた実践研究を推進する。 〈日本語教育部門〉小学校期の日本語非母語話者に焦点を当て、各地の団体、公立小学校等における言語教育の実態と改善すべき要素を、汎用的言語能力の観点から検証する。また、汎用的言語能力の育成を視野に入れた日本語教育テキストあるいはガイドブックの編集を行い、教育界に発信する。 〈学校教育部門〉全面的な調査協力を受諾してくださった大町市立美麻小中学校、同大町北小学校等をフィールドとしてアクションリサーチの手法を用いた実践研究を行うとともに、北佐久郡御代田町立御代田南小学校における民族誌的アプローチによる調査研究で得られたデータを整理・分析し、汎用的言語能力の構成要素を抽出する。さらに、次年度の中等教育段階における汎用的言語能力育成への視点を見据え、小中・中高連携の視座から展開されている言語教育の実態と授業改善への取組について調査研究を行う。
|