研究課題/領域番号 |
20H01700
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
福井 文威 鎌倉女子大学, 学術研究所, 准教授 (60792364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 寄付 / 高等教育 / 科学技術 / 日本社会 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本人の大学への寄付意識に着目し、社会調査と実験を用いて如何なる属性や経験を有する個人が大学への寄付に積極的な態度を示しているのかを明らかにする。これを通じて、日本社会に見合った高等教育への寄付拡大に向けた政策論議の基盤を形成することを目指す。
初年度は、主に2つの作業に従事した。ひとつは、戦後の日本の大学への寄付を支える制度の変遷とその社会的コンテクストを明らかにするにあたり、新聞記事等をはじめとする定性的資料の内容分析、寄付者の動機に関する統計的調査の二次分析を行った。ここから、日本社会においては、大学と寄付者の利益相反の問題が1970年代に社会課題として表出し、寄付制度が規制される方向性へ転換されてきたこと等を詳らかにした。また、統計的調査の二次分析より、教育活動に寄付経験のある日本人のプロファイルを明らかにし、他の非営利セクターへの寄付者との相違点を明らかにした。これらの分析結果は、日本社会における高等教育システムの特質性をまとめた学術図書、並びに、Philanthropy and Education分野の学術図書に英語論文として執筆した。
いまひとつは、日本の大学に対する寄付経験者15名に対するインタビュー調査を実施した。特に、大学に定期的に寄付をしている寄付者に注目し、寄付者の大学時代の経験、大学卒業後の経験、現在の家庭環境、制度的なインセンティブなどが寄付行動にどのように寄与しているのか把握した。次年度は、本インタビュー調査で得られたデータを分析し、日本人の寄付動機に関する理論的枠組みの構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度前半はコロナ禍により、予定していた海外招聘者とのワークショップが見送られ、インタビュー調査などが実施できなかった。一方、既存の定性的資料や統計的調査の二次分析を通じて、日本社会における大学と寄付に関する制度の社会的コンテクストを整理する作業に従事できた。また、年度後半には、インタビュー調査も実現でき、大学に対して定期的に寄付をしている方々の貴重なデータを収集することができている。その成果は一部、英語論文としてまとめ始めており、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度実施したインタビュー調査のデータを分析し、日本社会における教育研究活動への寄付意識がどのような個人の経験や属性から規定されているのか、その理論仮説を論文にまとめる。また、それをもとにした大規模な調査票調査を行う予定である。
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備考 |
インタビュー記事:「日米の寄附税制と動向」『こうえき』第10号, SMBC日興証券
政府連携(資料提供):総合科学技術・イノベーション会議「第2回 世界と伍する研究大学専門調査会」
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