本研究の学術的独自性は、第1に、大学への寄付動機に関する日本的特質性を明らかにするにあたり、現象学的研究から6つの動機の枠組みを提示したことにある。これは、今後の非西欧圏における高等教育と寄付動機研究に寄与するものであり学術的な意義がある。第2に、先行研究で十分に考慮されてこなかった過去の在学中の経験に着目し、それらが卒業後の寄付意識に影響を及ぼす構造を実証的に検証した点にある。特に、給付型奨学金が高等教育受益者本人の費用負担を軽減する側面のみならず、将来的に寄付を通じた高等教育の社会的支出へと繋がる投資的な側面を持つ構造(給付型奨学金と寄付の循環構造)を提示した点は政策的な含意を有する。
|