研究課題/領域番号 |
20H01703
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 昌子 筑波大学, 人間系, 教授 (70412327)
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研究分担者 |
城本 修 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00290544)
趙 成河 筑波大学, 人間系, 特任助教 (20825070)
今富 摂子 目白大学, 保健医療学部, 准教授 (30509633)
小林 宏明 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50334024)
後藤 多可志 目白大学, 保健医療学部, 准教授 (50584231)
畦上 恭彦 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (70337434)
牧野 泰美 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研修事業部, 上席総括研究員 (80249945)
飯村 大智 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (40881842)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学齢期 / ことばの教室 / 言語障害 / 吃音 / 構音障害 / 音声障害 / 言語発達障害 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず、小学校ことばの教室での入級審査時に使用可能な、発話と言語能力の包括的アセスメントツールを開発することを目的とする。アセスメントの対象となる障害は、言語発達障害、吃音、構音障害の3障害である。これらの問題が複数にわたり合併して現れることも想定し、事例解説付きマニュアルの添付により、指導介入にあたり優先順位を付けることが可能である、包括的なツールの開発を目指す。 研究期間である4年間の予定では、1年目において、入級審査時に最初に保護者に回答を求める質問紙を作成する。2年目には、保護者の回答をもとに、次は教員に尋ねる質問紙を作成する。その後、保護者と教員に回答された内容をもとに、児童に対して行う検査課題を作成する。本検査の信頼性と妥当性を検討し、検査実施マニュアルを作成するところまでが、本研究全体の目標である。 初年度の実績は、「言語発達障害班」「吃音班」「構音障害・音声障害班」「発達障害班」が数回の班会議を経て、保護者や教員に行う質問項目を立案したことである。当初は、教員のみに質問紙を送る予定であったが,保護者への質問紙を追加することとした。入級審査時にまず、保護者に質問紙を実施し、こちらに教員の見立てを照合させて使用するものである。従って、ことばの教室への入級を希望した際に保護者が把握している問題点を教諭が把握するために使われる予定である。この保護者用の質問紙をことばの教室宛てに郵送した。現在は、回答を依頼中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ことばの教室で用いることができる「発話と言語能力の包括的アセスメントツール」を、DVD付きの書籍として出版することを目指している。そこで、まず、初年度はことばの教室での経験年数が10年以上の教諭30名、小児領域が専門の言語聴覚士30名を対象に入級審査で判断すべき内容と必要だと考える検査項目についての質問紙調査を行うことを目的とし,その目的が達成されている。 具体的には,本研究では「言語発達障害班」「吃音班」「構音障害・音声障害班」「発達障害班」に分かれ、質問紙を構成する適切な項目について検討した。検討した結果,入級審査時に行う質問紙を二段階に分けて行うこととした。教員だけでなく、その前段階として保護者に対しても質問紙を配布することになった。第一段階に行う質問紙は、ことばの教室への入級を希望した際に保護者が把握している問題点を教諭が把握するための調査票である。この結果と教員が回答する質問紙の結果を組み合わせて、子どもの状態を把握した後で、子どもへの検査を行い評価するという流れを想定した。現在は,保護者への質問紙について、郵送での調査を開始したところであり,返送期間中である。従って,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる本年度は、評価ツール全体の構成を検討し包括的アセスメントツール(案)とマニュアルを作成することを目指す。そのために、「言語発達障害班」「吃音班」「構音障害・音声障害班」「発達障害班」が子どもに実施する検査課題を作成する。実施による判定の暫定的基準値の決定、妥当性の検証まで行う。具体的には、各班に割り当てられた検査課題を、各障害群(言語発達、吃音、構音、発達障害)各20名を対象に実施する。得られたデータによる結果を統制群(20名)のものと比較し、基準値を暫定的に決定する。さらに、各障害のある児童20名には、その障害に特化した検査を行い基準関連妥当性を検討する。 3年目には、包括的アセスメントツール(案)ことばの教室の入級審査時での使用を試みる。検査結果から、評価者間信頼性、再検査信頼性、を検証する。ことばの教室で実際に入級審査を実施した児童を対象に、指導開始前までの期間に包括的アセスメントツール(案)を実施する。ことばの教室担当教諭、言語聴覚士各10名がビデオを視聴し評価を行い、その結果から評価者間信頼性を検討する。さらに、3か月後に実施し、再検査信頼性を検討する。マニュアルの使用について、ことばの教室教諭を対象にアンケート調査を実施し、結果をもとにマニュアルを修正する。 4年目には、包括的アセスメントツール(案)の修正を行い、事例集の解説を完成させDVD書籍として出版する。包括的アセスメントツール(案)を用いて入級した児童の措置後の指導経過を、追跡する。言語聴覚士は随時助言に入り、指導経過について事例報告としてまとめる。発達障害の特徴を併存する事例については、既存の尺度を用いて、発達障害に特有な行動の出現の仕方の変化を追う。約1年間の量的変化と質的変化を示す。研究代表者・研究分担者が各自で事例を持ち寄り、成功例を事例報告集とする予定である。
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