研究課題
本研究は,小学校ことばの教室での入級審査時に使用可能な、発話と言語能力の包括的アセスメントツールを開発することを目的としている。昨年度は,入級を希望する児童がいた場合,まず,ことばの教室で児童の実態を把握するための質問紙が必要であると考え,一昨年に作成した質問紙を東京都,埼玉県等で実施した。対象をことばの教室に通っている児童1・2年生の親とし,約200名分を実施した親の回答と照合させるため,ことばの教室の教諭にも回答を依頼した。統制群として,ことばの教室に通っていない児童1・2年生の親を対象とし,約100名に対し同様の調査を実施した。児童の主な診断名・評価結果は構音障害,吃音,言語発達障害,学習障害であった。自閉スペクトラム症,発達性協調運動障害,注意欠如・多動症,境界域も少数だがみられた。一方,保護者による回答では構音障害,吃音,言語発達障害のいずれかの言語障害の特徴が示された項目にチェックされていたにもかかわらず,教員による回答では該当する障害種の回答がなかった事例が約50%あった。逆に,教員による回答ではあるが,保護者の回答にはない事例は約10%であった。保護者の子どもへの観察がより細やかであると捉えるのか,チェックリストの項目が適切でないのか,引き続き検討する予定である。さらに,上記の質問紙に加え,児童に実施する評価課題について検討した。ことばの教室で対象とされる3つの言語障害のうち,言語発達障害については,実施課題を既存の評価ツールから抜粋して使用することとし,課題の選択を終えたところである。構音・音声障害と吃音については,動画を用いて課題を作成することを決定した。
2: おおむね順調に進展している
入級を希望する児童がいた場合, ことばの教室で児童の実態を把握するための質問紙親が回答する質問紙を計画通り実施できた点で,順調だと考えている。特に,当初はより少数への回答を求める予定であったが,ことばの教室に通う児童については約200名,ことばの教室に通っていない児童については約100名の回答を集めることができ,予定よりも多いサンプルを収集することができた。
昨年度に行った質問紙調査の回答を今年度も引き続き受け取り,ことばの教室に通っている児童については合計約300名分を目標とする。上記に述べたように,親とことばの教室の教諭の回答内容の相違について,理由を明らかにするための分析を行う予定である。引き続き,質問紙に加え,児童を対象に実施する課題を検討する。言語発達障害については,既に検討がなされているが,構音・音声障害と吃音についても検討を行う。後者の障害については,共通する動画を児童に提示し,発話を促すことで評価できるような検査を作成する予定である。したがって,今年度は動画を作成,実際にことばの教室の児童に課題を実施するところまでを予定している。
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