研究課題/領域番号 |
20H01745
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学域, 教授 (40303193)
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研究分担者 |
渡邊 慶子 (向井慶子) 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (00572059)
和田 信哉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60372471)
影山 和也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60432283)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学教育 / 空間図形カリキュラム / 算数と数学の接続 / 探究型の授業 / 教師の指導知 |
研究実績の概要 |
本研究は,図形教育において,算数での図形の直観的・経験的な学習と中等校数学での図形の関係的・論証的な学習のギャップ,及び平面図形の学習と空間図形の学習との不連続の現状に鑑み,小学校と中学校の一貫を縦軸,平面図形と空間図形の連動を横軸とする幾何カリキュラムを構成し,探究的な学びとしての空間図形の授業のあり方を研究するものである。 2020年度は,平面図形と空間図形の連動を視点とした小中一貫の空間図形カリキュラムの構成に関する研究を行った。特に,数学教育改造運動の精神の検討し,日本数学教育学会と数学教育協議会で提起されてきた教材を吟味した。 さらに,そうした検討を踏まえ,空間思考や空間観念に関する先行研究の吟味を通して,空間図形のカリキュラム構成の為の9つの視点(軸)を提起した。A)小学校と中学校の一貫性,B)平面図形と空間図形の連動,C)直観と論理の相補性,D)3次元表現と二次元表現,E)動的(操作的)と静的(視覚的):対象の動,方法の動,F)言語的表象とイメージ的表象の相補性,G)構成と分析の相補性,H)物的構成とICTによる構成,I)図形的現象(対象)と図形的推論(方法)。成果は日本数学教育学会「第8回春期研究大会論文集」にて発表した。 次に,証明活動に関して,操作的証明を学習過程に位置づけ,操作的証明と形式的証明とが相互構成される過程を理論的かつ実践的に吟味した。成果は,全国数学教育学会誌「数学教育学研究」にて発表した。 第三に,教科横断の視点に立って,数学と理科とを総合し,「関数的な見方・考え方」を働かせた理科授業の改善に関する検討を,理科・理科教育を専門とする研究者との共同研究を通して行った。 以上の研究から,算数と数学を一貫する空間図形のカリキュラム構成や授業構成に関わる一定の成果が得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は,理論的枠組みの整理と授業デザインの研究を並行して行うことを予定していた。 理論的枠組みに関しては,算数と数学の接続,数学教育史,空間図形の教材や学習指導に関して,国内外の先行研究を整理し,空間図形カリキュラムを構想する為の9つの軸を提起することができたことで,カリキュラム構成の原理の解明に関して,一定の成果があったと考える。 また,授業デザインに関しては,2つの学会の学会誌について,過去の実践的研究を丁寧にレビューし,空間図形に関する実践事例を分類整理した。このことを通して,授業デザインに関する視点を得ることができている。これらは今後の授業開発に生かす予定である。 学校での授業実践に関しては,中学1年の空間図形の教材を見直し,教授学的状況理論に基づいた授業デザインを開発し,実践を行い,ビデオデータの収集を行った。授業等のデータはトランスクリプトにし,それらに関する質的分析を開始する予定である。 以上の点から,おおむね予定通りに研究が進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,空間図形カリキュラム構成の為の枠組みの理論的な精緻化と,小学6年から中学3年までの空間図形教材に関する新たな授業デザインを行い,授業開発研究を実施することを予定する。また,データの一部は分析を行い,成果発表を行う。 具体的には,探求型の授業構成を実現するために,過去の教科書や文献を吟味して,探究活動を実現するカリキュラム構成の枠組みを洗練させることを目指す。また,既に実施した空間図形の授業データの分析を行い,その分析を理論的枠組みに反映させることを通して,枠組みの洗練を図りたい。 実践的には,小学6年から中学3年までの各学年で空間図形教材に関する新たな授業デザインを継続的に検討するとともに,学校の教師と協働で実験授業を計画し,実施する。実施した授業に関しては,教師や生徒へのインタビューも実施して,カリキュラムや授業の実現可能性を高めていきたいと考える。さらに,教師の指導法を比較することを通して,教師の数学的指導知の抽出も行う。 以上の作業を通して,カリキュラムの具体的な様相が明らかにできるものと考える。
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