事例情報に統計情報を付加することには認知への影響という観点では特別な利点は見いだせない。長い社会的認知の研究の中で、事例情報は統計情報よりの人の判断に強く影響すると言われていたが、本研究はリスクガバナンスの文脈の中で、統計情報には人々の認知の修正機能がないことを明らかにしたことに学術的な意義がある。リスクとは将来の見通しを“定量的”に表現するものである。しかし、本研究成果は、事例情報の偏りが人の判断・意思決定を大きく歪めてしまい、定量的な情報では是正されないという問題点を明らかにした。そういった問題点を踏まえたリスク情報環境の構築という方向性を提示したことに本研究成果の社会的意義がある。
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