研究課題/領域番号 |
20H01759
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
若林 明雄 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 名誉教授 (30175062)
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研究分担者 |
清水 栄司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00292699)
大渓 俊幸 千葉大学, 総合安全衛生管理機構, 准教授 (60456118)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 自閉症スペクトラム指数 / 皮質血流状態 / ASD診断 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)について,専門家による診断とともに,認知課題処理中の脳皮質活動状態の測定結果を組合わせたASD診断について高い精度をもつ検査を作成することを目的に,すでに収集し蓄積しているAutism-Spectrum Quotient (AQ) のデータに加え,新たに20代成人と40代成人のAQデータ各500件程度を加え,過去20年間のAQ得点およびASD診断レベルに該当する人の割合経年的変化を見るとともに,DSM-5にもとづく精神医学的診断結果との対応関係を検討し,オリジナルの50項目版よりも診断識別力が高く,信頼性も高い検査(項目と課題)を新たに作成することを目的として研究を進めている。 現在は,既存の50項目版のAQよりも診断性度及び信頼性が高い新改訂版AQ-32(32項目)を作成し,その検査結果に基づき,AQ-32得点が健常範囲のもの(統制群),診断基準に相当するもの(検査陽性群),精神医学的診断でASDと診断されたもの(診断群)の3グループを抽出し,これら3群に該当する対象に,複数の認知処理課題遂行を求め,NIRS(光トポグラフィー)によって認知課題遂行中の脳皮質血流変化の測定を実施している段階である。 現時点では,試験的にさまざまな認知課題(視線Simon課題,Ansorger課題,線分判断課題など)を実施し,NIRSでの皮質血流状態の測定結果との対応関係を個別に検討しながら,もっともASD診断に有効となり得る課題の種類や内容,条件などを明らかにするとともに,診断手がかりとなり得る皮質活動部位との関連性についても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19 の感染拡大以降,実験参加者の確保に時間がかかるようになっており,また実験の実施自体においても,感染防止対策を徹底するために,個々の実験に要する時間が予定よりも長くかかるようになったため,全体的に,NIRS(光トポグラフィー)を使用した個別の実験室実験の進行が遅れ気味となっている。 また,当初研究期間の初年次に海外で行う予定であった実験については,COVID-19の感染状況を考慮し,延期中となっている。
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今後の研究の推進方策 |
ASDの増加が近年報告されているが,ASDに対する関心の増加等による診断数の増加を背景とした表面的な増加である可能性もあり,この点について,研究者の研究室が所有するAQのデータベースを利用してASD傾向の経年変化を確認する。 また,COVID-19の感染状況も落ちついてきたため,若干の遅れが生じていた実験室でのNIRSを使用した個別実験を積極的に推進し,所定の目的数のデータ収集を行う。 NIRSによる皮質血流状態測定時に行う認知課題の種類によって,診断の手がかりとなり得る皮質の活動部位に違いがあるが,その「課題ー皮質部位関連性」の個人差が大きいため,測定データの組み合わせが膨大であることも含め,解析には時間がかかっているが,新年度に引き続き実験を継続するとともに,ASD傾向の程度と,課題ー皮質関連部位の対応関係について多変量解析手法などの多次元解析を適用することで,診断法の最適解を求める。
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