研究課題
本研究では、他者の行為は合理的か逸脱があるかに子どもが気づく能力が他者の意図推測に結びつき語の学習を促進する可能性を明らかとすることを目的としていた。本研究は連合学習が強調されがちだった語の獲得研究について、社会語用論的アプローチをとり、これまで見過ごされがちであった「他者行為の見積もり」と語意味の推測能力について、2つの実験により調べた。1つ目の実験は、実験者が事物の部分に指を接触しつつ指先を小さく旋回させて語(部分名称)を言ったときに、成人の実験者がわざわざ行っているこの行為について幼児が正しく見積もりを行い、部分名称の獲得に結びつけるかを調べた。2歳半、4歳半、成人を対象として調べ、いずれの年齢群でもこの通常の指さしとは異なる指さしについて正しく解釈し、部分名称を学べることがわかった。2歳半という若い年齢でも「他者行為の見積もり」から部分名称という比較的学びにくい語を学べることが明らかとなった。この成果は言語発達に関する評価の高い国際ジャーナルであるJournal of Child Languageに掲載された(2023年)。2つ目の実験は、事物の部分に指先を接触させる指さし(接触指さし)を利用し、指さしに加え実験者の視線シフトからも他者行為の見積もりができるかを検討した。3歳児・5歳児を対象とし、部分と全体が入れ子となった、より複雑な状態の事物の部分名称を学べるかを調べた。結果、いずれの年齢群も、接触指さしを解釈して語を学べたが、視線シフトの効果は5歳児でのみ明確であった。複数の手がかりを同時に考慮して他者行為の見積もりを行い語を学ぶことは、3歳ではまだ難しい可能性が示された。この研究は日本認知科学会大会(JCSS2023)において口頭発表に採択され発表した。本研究は他者行為の見積もりから語を学ぶ能力が幼児にあることを示し、社会語用論的アプローチの有効性を示した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Studies in Language Sciences
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