研究課題/領域番号 |
20H01773
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
坂本 真士 日本大学, 文理学部, 教授 (20316912)
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研究分担者 |
加藤 隆弘 九州大学, 大学病院, 講師 (70546465)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心理学 / 精神医学 / 抑うつ / ひきこもり / バイオマーカー / 会社員 / 適応 / 離職 |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大のため、研究計画を大幅変更して実施せざるを得なかった。心理学研究(坂本班)では、大学4年生を対象に質問紙調査を実施し、在学時の適応や仕事に関する意識を調査し、就職前におけるデータを構成する予定であった。また、この調査参加者の中から対人過敏傾向・自己優先志向が高い人・低い人を抽出し、対面でインタビューを実施し、次年度以降の質問票作成に活かす予定であった。 しかし、上記計画の実行が困難となった。また学生の就活状況が悪く、調査開始時期が遅れた。そこで、インターネット調査のみとすること、就職内定者を多くサンプリングするべく令和3年2月末から調査を実施することとした。 実際の調査では、調査会社にモニターとして登録している大学生・大学院生を対象とした。大学(院)卒業から入社2年までの縦断的調査を行う旨、事前に伝えた上で調査を実施した。調査は令和3年2月下旬~3月上旬まで実施し、1178名(男性277名、女性895名、その他・答えたくない6名)から有効回答を得た。調査では、デモグラフィック変数、自身の就職活動に対する評価、労働に関する意識および対人過敏傾向・自己優先志向を測定した。 精神医学研究(加藤班)では、当初福岡在住のひきこもり歴のない大学生・社会人に対して、構造化診断面接、自記式質問票、PCゲーム、採血による一般生化学検査・メタボローム解析・サイトカイン測定等を行う予定であったが、対面での面接・検査が困難になった。急遽予定を変更し、調査会社による社会人向けのオンライン調査を実施した。1053人がエントリー(主に会社員)し、COVID-19に関連する側面(自制行動の程度、自制行動への動機、COVID-19によるスティグマ、不安感、抑うつ感など)と一般的な精神状態(社会不安、抑うつ傾向、抑うつ関連の性格特性、レジリエンス)を独自のアンケートで評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述したとおり、新型コロナウイルス感染症の拡大により研究計画には大幅な見直しが迫られた。また、上記感染症の拡大は、就職活動や働き方そのものにも影響を与えている(例:採用の絞り込み、テレワーク勤務の導入)。このような事態は、本研究申請時には想定しておらず、また今後も感染症の収束が見込めないことから、研究方法の工夫をする必要があった。 しかし、本研究テーマと関連させると、このような事態は予想外ではあるが、興味深い知見を提供する可能性がある。例えば、ステイホームは、外に出ることができず、直接の対人的な接触が大幅に限定されるという点でひきこもりの状態と類似する。令和2年度の調査で得たデータを分析することにより、新タイプ抑うつやひきこもりに至る過程を解明するための示唆が得られると期待される。 実際の調査においては、心理学研究(坂本班)では代替的に実施したインターネット調査では1178名と多くのサンプルが集まった。次年度以降のこのサンプルに対する追跡調査を行うが、多くのサンプルを得たことでデータ収集に期待が持てる。 精神医学研究(加藤班)では、コロナ禍により対面調査が困難となったが、オンライン調査を導入し、社会人のコロナ関連の抑うつと自粛行動との間で興味深い結果を得ることが出来ており、概ね順調にすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、令和2年度に初回の調査を実施したサンプルに対し、引き続き質問紙調査を実施して前向き研究を継続する。この際、心理学研究(坂本班)の研究においては、5月からほぼ1ヶ月おきに3回調査を実施することにする。これには2つの意味がある。ひとつは、新入社員にとって、会社に慣れるまでの3ヶ月間に様々な変化が生じると考えられることから、比較的短期間でストレッサーや心身の調子を測定することが研究テーマ(すなわち、大学から会社への移行期における適応の検討)にとって重要と考えられるからである。もうひとつは、経験則ではあるが、比較的短期間に調査を行うことにより脱落率を抑え調査への協力率を上げられると期待されるからである。 このように複数回調査を繰り返した後、概ね8月の終わりから9月ごろに、上記のサンプルに対してインタビュー調査を行う。ここでは、インタビューに同意した者の中から質問紙調査の結果をもとに対象者を選定する。また、令和2年度の調査データがコロナ感染という環境下で得られた特異なデータである可能性もあるため、次年度も同様の研究計画で調査を実施することを検討したい。 精神医学研究(加藤班)では、オンライン調査を引き続き行うと同時に、コロナ禍の状況が改善次第、対面調査を進めてゆきたい。
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