研究課題/領域番号 |
20H01779
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河原 純一郎 北海道大学, 文学研究院, 教授 (30322241)
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研究分担者 |
田山 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (10468324)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 注意バイアス / 状態不安 / 特性不安 / 過敏性腸症候群 |
研究実績の概要 |
注意は主要な認知機能の1つであり,情報選択の役割を担う。物理的に顕著な属性をもつもの(閃光など)や現在遂行中の課題に関連するものごと(会話相手の声など)以外にも,自らが価値をおく対象(金銭など)や心的状況に一致した対象(心配ごと)にも注意は向く。本研究は不安な状態に関わる場面やものごとに注意が向きやすくなる状態である注意バイアスについて調べた。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome, IBS)の傾向をもつ対象者に対して,胃腸症状に関連した語はネガティブ語に比べて注意が向きやすいかを検討した。IBS患者は胃腸症状に関連した語を多く想起することが知られている。Tkalcic et al. (2014)はストループ課題を用いて,ストループ促進効果を報告している。一方で,古典的には抑うつ者は抑うつ関連語の反応時間が却って遅延する(Gotlib & McCann, 1984)。ストループ課題の場合はどの段階での干渉・促進課が判然としないため,本研究は胃腸症状に関わる状況脅威語(旅行,トイレなど)への注意バイアスをドットプローブ課題を用いて測定した。Tkalcic et al. (2014)で使用された語を入手し,日本語訳したのちに測定を行った。本年度も対面授業が抑制されていたため,実験室に来室した参加者の中にIBS傾向にある者の参加がほとんど得られなかった。状態不安と消化器症状関連語への注意バイアスとの関連を測定したところ,状態不安の高い個人は,消化器症状関連語に普段から注意を向け警戒している可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属機関でのCOVID-19への過剰な警戒のため,掲示板への参加者募集さえ禁止されており,十分な実験参加への勧誘ができなかったため。また遠隔授業と対面授業が混在していた結果,例年であれば大学構内に滞留していたはずの実験参加者候補がおらず,予定した実験参加者が集められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度こそは所属機関でのCOVID-19への対策が現実に即して緩和されることを期待し,実験室実験でIBS傾向のある参加者からのデータ取得を進める。学内各所への掲示を打診しているが,概ねネガティブな回答が多い。例えば教務関連のweb掲示板への参加者募集を依頼したが,特定の研究のための掲示は対象外であるとのことであった。各種ソーシャルメディアでの募集も試みたところ,掲示直後のみに限って若干参加者が増えることがあったが,その後すぐに沈静化した。webでの遠隔実験に切り替えることも選択肢のひとつかもしれないが,そうした場合は試行数を限定し,実施時間を大幅に短くする(5分程度)必要があり,測定精度が犠牲になる。また,遠隔実験の場合は謝金支払い手続きのハードルが高いうえ,個人情報漏洩対策が十分ではない。総長,理事を通じて改善を求めたが,財務部経理課からは対策・改善は必要ないとの回答しか得られず,困惑を極めている。この実験方法は有効に実施できる見込みがなく,実験室実験の機会がふえることを待つしかない。
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