研究課題/領域番号 |
20H01780
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
高野 裕治 人間環境大学, 総合心理学部, 教授 (00424317)
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研究分担者 |
笠原 好之 東北大学, 医学系研究科, 講師 (20511835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 意図理解 / マウス / ラット |
研究実績の概要 |
本課題では、人行動のモデル動物であるラット・マウスを用いて意図理解の神経基盤を解明することを目的としている。このために、霊長類で発展してきたミラーニューロンを記録するための行動実験をげっ歯類版を用いて、神経活動記録を試みるという全体計画である。昨年度は、ミラーニューロン課題のマウス版を研究代表による事前準備であったラット版を参考にして開発研究に主として取り組み、論文公刊することができた。この課題は、ラット同様に、マウスにもリーチングで餌報酬を獲得させる ことを訓練して、その後に他個体が同じ課題に従事するのを観察させるという課題構築に取り組んだ。この課題において、リーチングの事前学習がないと、マウ スは他個体のリーチングを観察することが少ないことも確認することができた。そして、これらの成果を取りまとめて、マウスによる意図理解行動場面についての行動実験開発として、Behavioural Brain Res誌に公刊した。加えて、このマウスの意図理解行動は、研究代表らによる新規な行動実験系であるため、その全 データを公開するためのデータ論文についても、Data in Brief誌に公刊することができた。 本年度はこの開発課題を用いて、神経活動を記録する準備に取り組んだ。マウスにおいては自閉モデルを中心に、各種モデル動物を作成して、意図理解課題における障がいを検討した。ラットにおいては、記録部位の絞り込みのため、脳局所破壊実験に取り組んだ。マウスにおいては、いくつかのモデル作成して、検討を重ねているが、行動結果より本実験に用いるモデル実験系の確定には至っていないが、このプロセスにおいて検討した実験系から派生した成果をマウスの不安行動に関するモデルとして論文を投稿した。ラットにおいては、いくつかの脳部位の検討を重ねている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題では、人行動のモデル動物であるラット・マウスを用いて意図理解の神経基盤を解明することを目的としている。このために、霊長類で発展してきたミラーニューロンを記録するための行動実験をげっ歯類版を用いて、神経活動記録を試みるという全体計画である。このため、行動実験の開発、モデル動物の選定、神経活動記録環境の構築、神経活動記録部位の選定のための脳局所破壊実験など、複数の実験パートで構成されている。このため、研究を推進するには、まとまった期間、自由に行動できることが前提になるが、Covid-19の大流行により、定期的に行動制限がかかる中での研究遂行には困難があった。 特に、神経活動の記録については、毎日の作業が不可欠であるため、準備を進めるのに遅れが生じた。しかし、記録部位を特定するための脳局所破壊部位の検討については、Covid-19の流行がやわらいだ期間にまとめて行うことで、一定の成果を上げることができ、次年度計画につながる大きな成果を上げることができた。 同様にモデルマウスの開発においても、Covid-19の大流行と平行して進めることには困難がともなった。特に、定期的に薬物を投与して作成するタイプのモデルの作成と実験系の維持は難しかった。このため、短期間で終わるマウスの行動実験系の作成に取り組み、一定の成果を上げることはできた。 ラットおよびマウスにおいて、上記のように研究は一定の成果はあげたが、計画よりは遅れが生じたのは否めない。しかしながら、Covid-19による行動制限のかからない環境になるタイミングに期待しての準備は進めることができたので、今後の計画を微修正して、成果をあげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、人行動のモデル動物であるラット・マウスを用いて意図理解の神経基盤を解明することを目的としており、行動実験の開発、モデル動物の選定、神経活動記録環境の構築、神経活動記録部位の選定のための脳局所破壊実験など、複数の実験パートの準備が必要である。このため、研究を推進するには、まとまった期間、自由に行動できることが前提になるが、Covid-19の大流行により、定期的に行動制限がかかる中での研究遂行には困難があった。このため、Covid-19による行動制限がかかった状況において、その部分においても、短期間で研究成果が得られるような変更を実施することで、成果を上げられる準備も進めた。次年度は、これらの研究成果を発信できるように研究推進する。また、Covid-19による行動制限がかからない状況であるならば、いくつかの実験系で本実験に移行する準備もできているので、共同研究先とのスケジュール調整を工夫することで、研究成果をあげていきたい。さらに、今後もCovid-19は一定周期で流行を繰り返すことが予測されるので、国内の感染者数の情報を注視することで、対策をとれば安全に動くことができる期間において、まとめて実験を進め、行動制限がかかる時にはデータ解析に取り組むなど、研究進捗のペース配分を調整することで、Covid-19の流行の波からの影響を受けないような工夫をして行きたい。そして、研究成果をこまめに、発信していくように努めるようにする。そして、それらの成果を集約することで、研究題目の目的を達成するようにする。
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