本課題では、人行動のモデル動物であるラット・マウスを用いて意図理解の神経基盤を解明することを目的としている。このために、霊長類で発展してきたミラーニューロンを記録するための行動実験をげっ歯類版を用いて、神経活動記録を試みるという全体計画である。 昨年度までに、ミラーニューロン課題のマウス版を研究代表による事前準備であったラット版を参考にして開発研究に主として取り組み、論文公刊することができた。マウスにリー チングで餌報酬を取るように訓練して、その後に他個体が同じ課題に従事するのを観察させるという課題であった。リーチングの事前学習がないと、マウスは他個体のリーチングを観察することが少ないことを確認することができる。これらの成果は、マウスによる意図理解行動場面についての行動実験開発として、Behavioural Brain Res誌、ならびにData in Brief誌に公刊済みである。加えて、今年度はラットにおいて、より高次な意図理解ができていることを探るために、地震の過去の経験を他個体の行動理解に活用できることを示した研究をAnimals誌に公刊することができた。これらの成果より、げっ歯類がヒト行動と比較できるような意図理解ができることについての解明が進めることができた。 加えて、開発したラットの意図理解課題において、前頭葉のある領域を破壊しての行動実験を行い、意図理解に障害が生じることをつかむことができ、マウスの意図理解課題においては自閉症モデルを用いて意図理解の障害が生じることがわかった。それぞれの成果を土台として、ラットの破壊実験の論文作成と、自閉症モデルマウスについての論文投稿をすることができた。自由活動下の神経活動計測のセッテイングについては、実験室の引っ越しなどもあり、現在進行中の状況ではあるが、全体的には順調にげっ歯類ミラーニューロンシステムの解明が進んだ。
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