研究課題/領域番号 |
20H01782
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本吉 勇 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60447034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 知覚的意思決定 |
研究実績の概要 |
系列的にサンプルされた視覚情報に基づくダイナミックな知覚的意思決定のメカニズムを解明するため,以下の実験的・計算論的研究を実施した.(1) 線分要素の方位の平均と分散が時間的に変動しつつ高速に提示される動的なテクスチャ刺激の平均方位をできるだけ早く回答させる実験をおこない,観察者の意思決定を決定づける各時刻の刺激情報を反応時間にロックした心理物理学的逆相関解析により導出した.その結果,反応の400-500 msにおける,100-200 msの範囲における平均方位が意思決定に最大の寄与をもつことが明らかになった.(2) 前記の実験パラダイムをさらに単純化し,空間一次元の動的輝度ノイズ中に緩やかに提示される輝度バーに対するコントラスト検出課題とし,反応にロックした逆相関解析により動的な意思決定を決定づけるClassificaiton Image(CI)を可視化した.その結果,反応の400-500 msをピークとするbiphasicな時空間プロファイルをもつCIが導出された.ただし,CIのプロファイルは反応時間に依存して複雑に変化した.これらの結果は複雑なCIの変動も含めて,古典的な時空間フィルタに近似される知覚過程とドリフト拡散機構に基づく伝統的な意思決定過程で構成される単純な知覚・決定ハイブリッドモデルにより定量的に説明されることが明らかになった.この成果は,国際誌に原著論文として公刊された.これらの成果により,反応時間データのみを対象とした分析(多くの注意研究)や,刺激提示後の反応に基づいた分析(多くの知覚研究)を超えて,現実場面に即した動的な知覚的意思決定のメカニズムを心理物理学的に解析する基盤を確立することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で提示した新たな心理物理学的実験パラダイムを2つのインスタンス(方位弁別・コントラスト検出)について適用し,新たな分析手法としての有効性を確認した.また,得られるデータは,従来の研究で示唆されてきた知覚・意思決定のモデルの適切な組み合わせにより基本的に説明可能であるため,それを基礎モデルとして意思決定に関わる多様な効果(注意・報酬・意識)などを分析できる見込みが得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度に確立した実験・解析パラダイムを基盤として,意思決定における格別に重要な修飾要素である「注意」の効果を検討するとともに,脳波計測を組み合わせて神経基盤を探るための検討を開始する.
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