研究課題
本年度は、随意行為により距離知覚の収縮が起こるかを検討するため、実験参加者のボタン押しに随伴させて3100 cd/m2の四角形の光刺激を500ms提示して残像を形成させた上で、実験参加者から114cm、171cm、228cm前方のモニターに残像を投影させ、その残像の大きさを実験参加者にそれぞれの距離のモニター上の残像の横の対辺をマウスクリックしてもらうことで測定した。統制条件では、何もせずに同一の刺激を見て残像を形成させた。エンメルトの法則によれば、知覚された大きさと距離は互いに依存しており、何らかの要因によって距離知覚の変化が生じれば、それは必然的に知覚された大きさの変化に反映されることになる。したがって、この法則を利用すれば、大きさ知覚から間接的に距離知覚を算出することができる。その結果、随意行為により光刺激が生じる場合は、自分がその光を生じさせたという行為主体感は高まるが、残像の大きさは統制条件と変化がなかった。両眼でモニターを見ており、両眼視さや輻輳角による距離手がかりが強固にあるため、順モデルによる予測の効果が生じなかった可能性もあり、右に一点だけの穴の空いたピンホールメガネを装着させて同様の実験も行ったが、それでも随意行為の効果は見られなかった。残像の大きさ知覚に関わるV1は網膜からの感覚入力以外にも広範囲の皮質からの下行性の投射も受けるが、本研究では、3100 cd/m2という輝度の高い刺激を500msという短時間しか提示しておらず、高次皮質からのトップダウン効果を受けにくかった可能性がある。また、随意性そのものより、随意行為により報酬が得られるかなど、報酬予期の調整を受ける可能性もある。今後の検討が必要である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Psychological Science
巻: 33 ページ: 816-;829.
10.1177/09567976211055375