研究課題/領域番号 |
20H01786
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
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研究分担者 |
湯澤 正通 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (10253238)
中山 真孝 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (40838398)
上田 祥行 京都大学, こころの未来研究センター, 特定講師 (80582494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 実行機能 / ワーキングメモリ / 知識 / 実行機能知識 |
研究実績の概要 |
我々の思考と行動を目標に適合するよう管理統制する心の制御機能は、実行機能と呼ばれ、その認知メカニズムと発達過程、神経基盤、および遺伝基盤の解明が破竹の勢いで進んでいる。実行機能は、学習により習慣化した思考・行動パターンを打ち破る役割を担うため、これまで、学習された機能とは一線を画するものとして捉えられてきた。しかし、近年の研究は、実行機能が、経験によって形成され変容することを示し、その動態が、学習によって蓄積された「知識」に基づくことを示唆している。本研究は、実行機能の実現を支える知識を「実行機能知識 (Executive Knowledge)」と名付け、その獲得過程と運用機構を解明する。その知見に基づいて実行機能知識理論を構築し、実行機能の可塑性を「知識」の観点から検討するための理論的枠組みを提示することを目的としている。2020年度及び予算を繰り越した2021年度には、「実行機能知識」の獲得と運用を検討するための心理学パラダイムを確立し、成人を対象に、大規模な心理学実験(N=114)を行い、実行機能が実験課題を通じた経験によって適応的に変化することを確認した。具体的には、実行機能課題に含まれる制御負荷の高い試行と負荷の低い試行の系列を操作し、高制御負荷の試行が特定の系列位置に出現する場合には、課題成績が向上することを確認した。また規則性へのアウェアネスとこうした課題成績の関係も検討した。これらの成果は、Experimental Psychology Societyの大会と日本ワーキングメモリ学会の大会において報告されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討の対象となる「実行機能知識」の獲得と運用を検討するための心理学パラダイムの確立に成功した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のために、オンサイトでの実験実施が困難であり、また、海外渡航が不可能となったため、国外への学会参加がかなわなかった。こうした状況の中でも研究を計画通りに進めるため、Web上で実施できる実験のプログラムを開発して、その実験の手続きを詳細に検討して精緻化していった。成人を対象に、オンラインでの心理学実験を行うことが可能となり、大規模な実験を実施した。1ヶ月に1回程度のペースでオンライン会議を開催し、結果の分析、考察を行い、オンラインの学会にて報告することができた。関連の文献展望及び論文執筆も行い、国際学術誌に公刊してきた。以上のように、オンラインでの実験、オンラインでの学会発表、国際誌への報告という方法によって、研究本研究は、研究計画に沿ってほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の早い時期に、前年度にすでに終えた実験のデータを詳しく解析し、続く実験の詳細を検討する。得られたデータに関しては、そこから導出される成果に基づき、すでに2件の学会発表を完了している。また、これらのデータに基づいた成果は、英語論文として報告するため、既にとりまとめを行い、原稿を執筆している。今後はこれは国際学術誌へ投稿し、掲載を目指す。2022年度には、特に、長期間にわたる課題遂行が実行機能課題遂行に及ぼす適応過程の検討行うため、比較的長い期間の実験を予定している。実験による実証的検討と成果報告を通じた議論を踏まえた理論的精緻化を並行して行い、研究プロジェクトを推進していく。
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