2021年度研究費の研究により,基底がq-crystalline prism上にある場合にprismatic crystalとそのコホモロジーをq-Higgs加群を用いて記述する一般論を得ていた.しかしながら基底がq-crystalline prism上にない,あるいは基底を考えない絶対的な場合にも,数論的に興味深いコホモロジーや係数理論が現れる.考えている基底やスキームが1の原始p乗根を含む場合に,1の原始p乗根を変数qへ持ち上げ,変数qについての数論的q-Higgs場を加えることにより,prismatic crystalとそのコホモロジーの局所的記述を与えた.数論的q-Higgs微分は幾何的q-Higgsb微分と可換でなく,ある種の非可換なq-Higgs場があらわれる.q-crystalline prism上での手法の非可換版の構築が鍵となった.p進整数環に1の原始p乗根を付加した環上の絶対prismatic crystalにおいてGros-Le Stum-Quirosによる数論的q-Higgs場のみを用いた先行研究があった.q-crystalline prism上での研究も進め,Frobenius引き戻しや積構造との関係を明確にし,とくにF-prismatic crystalのコホモロジーのNygaard filtrationのq-Higgs加群を用いた記述を与えた. AbbesとGrosと引き続きp進Simpson対応の関手性についての共同研究を行なった.共同研究では,p進周期環を用いたp進Simpson対応の構成を用いているが,Hitchin fibrationと指数写像を用いた別のアプローチも知られている.p進周期環のある種の双対に自然に普遍的な指数写像が現れ,この観察を通して二つのアプローチを関連づけられることを明らかにした.
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