2021年の数理解析研究所の訪問滞在型研究「作用素環論とその応用」に合わせて、数理解析研究所にて作用素環論の諸相にわたる複数の国際研究集会を開催する予定であったが、新型コロナ感染症の感染拡大に伴う入国制限のため実現することができなかった。その結果、国際研究集会の予定を翌2022年に延期したが、2022年も10月の水際対策緩和の直前まで入国制限解除の見通しが立たなかったため、国際研究集会の予定を立てることができず国際研究集会開催を断念することとなった。 群の解析学的な研究においては、従順性は極めて重要な性質である。無限次元解析の世界においkては、一般的にはいくらでもワイルドなものが存在するのが普通であり、したがって一般的な状況では分類研究などを行うことはできないと考えられている。しかし、従順性の仮定のもとでは解析的にワイルドな現象が起こらないことが期待され、より深い研究を行うことができるのである。作用素環に対する群作用に関して、従順性の条件がいくつか提唱され、その間の関係は不明であったが、本研究計画では鈴木北海道大学准教授との共同研究でそれらがすべて同値であることを示し、従順作用の興味深い例をいくつも構成した。論文「On characterizations of amenable C*-dynamical systems and new examples」はSelecta Mathematicaに掲載された。 そのほかにも作用素環論と日可換実代数幾何学を用いた離散群の表現論を研究した。特殊線形群がKazhdanの性質を持つことは半世紀以上前に示された重要な定理であり、現在では複数の証明が知られているが、そのいずれもKazhdanの性質の弱い形「相対Kazhdanの性質」を踏み台にするものであった。本研究計画では「相対Kazhdanの性質」を経由しない新しい証明を発見した。
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