群の解析学的な研究においては、従順性は極めて重要な性質である。無限次元解析の世界においkては、一般的にはいくらでもワイルドなものが存在するのが普通であり、したがって一般的な状況では分類研究などを行うことはできないと考えられている。しかし、従順性の仮定のもとでは解析的にワイルドな現象が起こらないことが期待され、より深い研究を行うことができるのである。2023年度の本研究では作用素環のユニタリ群がいつ従順になるかを詳細に調べた。特に単位的単純核型C*環のユニタリ群に関する結果には分類理論への応用が見込まれる。また調査の結果、各従順性の概念(強従順性、弱従順性、斜従順性)が、作用素環のユニタリ群に対して異なることが判明した。とくに強従順性と斜従順性が異なる概念であるか否かは(作用素環のユニタリ群に限らず一般的に)不明であったが、それが実際に異なることを具体例付きで証明した。論文はMuenster Journal of MathematicsのKirchberg教授追悼特別号に掲載予定である。 そのほかにも作用素環論と非可換実代数幾何学を用いた離散群の表現論を研究した。特殊線形群がKazhdanの性質を持つことは半世紀以上前に示された重要な定理であり、現在では複数の証明が知られているが、そのいずれもKazhdanの性質の弱い形「相対Kazhdanの性質」を踏み台にするものであった。本研究計画では「相対Kazhdanの性質」を経由しない新しい証明を発見した。
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