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2022 年度 実績報告書

物理と数学の協働によるNavier-Stokes乱流のエネルギーカスケードの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H01819
研究機関一橋大学

研究代表者

米田 剛  一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (30619086)

研究分担者 後藤 晋  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40321616)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードNavier-Stokes乱流 / 機械学習 / 渦伸長
研究実績の概要

過去の研究:Yoneda-Goto-Tsuruhashi(2022)とTsuruhashi-Goto-Oka-Yoneda(2022)では、3次元Navier-Stokes乱流に対する研究が進められた。それらでは、大小隣り合うスケール間の渦によってエネルギーの受け渡しが主に行われていること、そのスケール分解された渦が-5/3乗則に対応するベキ則(渦軸の総長に対するベキ則)をロバストに満たしていることが示された。
そのことを踏まえた上で、2023年度(繰越年度)では、複数スケール間で同時に渦伸長が発生する場合を調べた(Jeong-Na-Yoneda, Nonlinearity)。より具体的には、3スケールの渦が混在している場合の渦伸長過程を調べるため、3次元非圧縮Euler方程式の解の振る舞いを観察した。その結果、3スケール間の複雑な相互作用によって、渦伸長過程がむしろ弱まることが数学的に証明された。この数学結果によって、渦伸長が2スケール間で起きていることがむしろ自然であることが示唆される。
2022年度以前の研究において渦軸の精密な可視化に成功しているので、今後は、その可視化データを機械学習させることで新たなる「乱流クロージャーモデル」を創出する計画である。そのための前段階として、時系列データに対する機械学習スキームを構築した。近年「リザバー機械学習」が、時系列データを機械学習させる際の有力な手法となりつつある。低コスト・圧倒的に短い計算時間が最大のメリットではあるが、リカレント結合重み行列などに乱数を使ってしまっており、そのことによって、学習モデルに内在するはずの数理構造が見えにくくなってしまっている。そこで、パターン記憶の構造を明示的に組み込んだ機械学習スキームを構築した。そのことから、乱流クロージャーモデル構築の際、その機械学習モデルを用いることで、非線形数理構造が抽出できることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

過去に創出したYoneda-Goto-Tsuruhashi(2022)とTsuruhashi-Goto-Oka-Yoneda(2022)こそ、当初に計画した主な達成目標の一つであった。3次元Navier-Stokes乱流におけるスケール分解された渦が、-5/3乗則に対応するベキ則(渦軸の総長に対するベキ則)をロバストに満たしていることが示された。これこそが「乱流の主要描像として、各スケールの渦軸を採用し、その渦軸の時間発展挙動を調べれば、乱流の数理的理解が本質的に深まるのではないか」という、当初計画した通りの研究成果が得られた形となっている。ただ、これは、今後更に続く壮大な研究に対する第一歩に過ぎない。乱流の各スケールの渦軸抽出に成功したので、そこから乱流の数理構造理解を深めるための前段階として、機械学習手法の洗練化に専念できた。これは前述のとおり、「各スケールの渦軸の抽出」という最もネックとなる部分が、当初予定より早く成功したことに起因している。

今後の研究の推進方策

機械学習手法を駆使して、各スケールの渦軸の時間発展挙動を表す「クロージャーモデル」の構築、およびその数理的理解を目指す。より具体的には、パターン記憶の構造を明示的に組み込んだ機械学習スキームを構築したので、それを援用することにより、どういった渦軸形状の時間発展挙動がより小さなスケールへのエネルギー伝達に寄与しているのか(どういった渦軸形状・時間発展パターンがもっとも実現しやすいのか)を明らかにする計画である。
従来のリザバー機械学習を用いた乱流研究も進捗させることで、従来得られている機械学習結果・造詣との比較検討も進める。そのことによって、機械学習スキーム自体が暗に持っている(筈の)非線形構造抽出に対する数理的理解も深めていく計画である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 8件)

  • [国際共同研究] ソウル大学(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      ソウル大学
  • [雑誌論文] Weakened vortex stretching effect in three scale hierarchy for the 3D Euler equations2024

    • 著者名/発表者名
      In-Jee Jeong、Jungkyoung Na、Tsuyoshi Yoneda
    • 雑誌名

      Nonlinearity

      巻: 37 ページ: 055014~055014

    • DOI

      10.1088/1361-6544/ad3607

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Hierarchy of coherent vortices in turbulence behind a cylinder2023

    • 著者名/発表者名
      Jun Fujino, Yutano Motoori, Susumu Goto
    • 雑誌名

      J. Fluid Mech.

      巻: 975 ページ: A13

    • DOI

      10.1017/jfm.2023.824

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Fourier analytical understanding of chaos in RNN and non-separable function space in DNN2024

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      予測科学セミナー,理化学研究所
    • 招待講演
  • [学会発表] Recent development in the study of 3D Navier-Stokes turbulence in terms of scale local vortex stretching2024

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      Workshop on Analysis of PDEs in Fluid, Osaka Metropolitan University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] フーリエ変換の不確定性原理と機械学習の数理構造2024

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      日本数学会・2024年度年会
  • [学会発表] Turbulence modulation by heavy solid particles2024

    • 著者名/発表者名
      Susumu Goto
    • 学会等名
      IUTAM Symposium on Rapid granular flows and turbulent particle suspensions
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mathematical reformulation of the Kolmogorov-Richardson energy cascade in terms of vortex stretching and related topics2023

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      International Congress on Industrial and Applied Mathematics, Waseda University
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 自己回帰的で発散しない時系列データに対するリザバーコンピューティングの完全予測構造について2023

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      第14回 微分方程式とデータサイエンス研究会, 金沢大学
    • 招待講演
  • [学会発表] Mathematical structure of perfect predictive reservoir computing for autoregressive type of time series data2023

    • 著者名/発表者名
      T. Yoneda
    • 学会等名
      Workshop on Infinite dimensional Geometry and PDEs, BIRS research station
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The condition and rate of attenuation of turbulent kinetic energy due to solid spherical particles2023

    • 著者名/発表者名
      Susumu Goto, Sunao Oka, Yutaro Motoori, Hideto Awai
    • 学会等名
      IUTAM Symposium on Turbulent Structure and Particles-Turbulence Interaction
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Coherent structures and transport phenomena in turbulence2023

    • 著者名/発表者名
      Susumu Goto, Yutaro Motoori, Jun Fujino, Sunao Oka, Yusuke Koide, Hideto Awai
    • 学会等名
      ASME-JSME-KSME Fluids Engineering Division Conference
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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