研究課題/領域番号 |
20H01824
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤堂 眞治 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10291337)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 詳細つりあい / 計算物理 / 強相関多体系 / 量子モンテカルロ法 / 量子相関 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マルコフ連鎖モンテカルロ法を基本原理から見直し深化させることにある。さらに、相関の強い多体系に応用し、相関の効果が本質的な役割を果たす相転移現象や量子相の解明を目指す 2020年度の実績は以下の通りである 1) マルコフ連鎖モンテカルロ法の基本原理: 確率的ポテンシャルスイッチングの原理について考察を進め、連続極限において、イベント連鎖モンテカルロ法の基礎となっている因数化されたメトロポリス法と等価であることなど、マルコフ連鎖の基本概念間の関係・関連に関する研究を進めた。2) 経路積分モンテカルロ法: ボーズ粒子系に対する経路積分モンテカルロ法において、粒子の対称性を正しく取り入れる新しい更新方法を提案した。ハミルトニアンモンテカルロ法において詳細つりあいを破る方法についても研究を進めた。3) 制約条件の強い系に対するモンテカルロ: 量子ダイマー模型に対する効率的なクラスター更新法を、ダイマーとモノマー、および多体相互作用を含む、より一般的なクラスの模型に拡張した。交換モンテカルロ法を組み合わせることで、巻き付き数を固定しないシミュレーションを実現した。4) 高次元系における量子相関: 基底状態量子モンテカルロ法とレプリカ法を組み合わせ、量子多体系のエンタングルメントエントロピーを直接計算することができる。虚時間方向の境界条件のサンプリングのためにWang-Landau法を導入し、高並列計算のためのライブラリ開発を行った。5) プログラム開発・公開: 計算物質科学アプリ・ツールをおさめた統合パッケージ MateriApps LIVE! について、新しいアプリ・ツールの追加、OSのバージョンアップなど整備を進めた。インストールスクリプト集 MateriApps Installer も大幅なバージョンアップを行い、東大物性研のスパコンシステムへの対応を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に上げた基本原理の解明・アルゴリズム開発・強相関多体系への応用・大規模並列化・プログラム開発と公開それぞれについて、個別には多少の進捗の差があるものの、全体として順調に研究は進んでいる
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度の進捗状況を踏まえ、以下の4つのテーマに焦点を絞り研究を遂行・継続する 1) マルコフ連鎖モンテカルロ法の基本原理: 離散変数系に対する棄却なしモンテカルロ法、連続変数系に対するイベント連鎖モンテカルロ法などと、マルコフ連鎖のカップリングという考え方に基づく収束証明や完全サンプリングなどの様々な概念との関連性あるいは相補性について明らかにする。2) イベント連鎖経路積分モンテカルロ法: 内部自由度をもつボーズ粒子系に対する量子モンテカルロ手法を開発する。3) 制約条件の強い系に対する棄却なしモンテカルロ法: Sweeping Clusterアルゴリズムを利用し、正方格子、三角格子、カゴメ格子、パイロクロア格子上の量子ダイマー模型について大規模シミュレーションを実行し、有限温度の相図を確立する。4) プログラム・ライブラリの開発と公開: イベント連鎖経路積分モンテカルロ法、量子ダイマー模型のための量子モンテカルロ法、棄却なしハミルトニアンモンテカルロ、並列イベント連鎖モンテカルロ法をオープンソースソフトウェアとして公開し、計算物質科学のポータルサイトMateriAppsやMateriApps LIVE!へ展開する
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