研究課題/領域番号 |
20H01828
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 亮 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10435951)
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研究分担者 |
小布施 秀明 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50415121)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子ウォーク / 量子光学 / 量子探索 / 量子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、量子ウォークの境界条件として、2次元系において並進対称性を持つヘリカル境界条件に着目、光子を用いた新しい時間発展プロトコルで実現する。これにより、新たな量子シミュレーションや、量子探索アルゴリズムの実装といった応用が期待できる。令和4年度は、(1)光子の高速ゲーティング法の検証に関する研究と(2)量子ウォーク時間発展部分の構築に向けた準備、および(3)高次元量子ウォークを用いた量子探索アルゴリズムに関する理論の3つの項目に関して研究を進めた。 項目1に関しては、当初の研究計画では、電気光学素子を使った高速ゲーティング法により単一光子性を担保することを構想していた。しかし、本研究で用いる花弁状ビームを電気光学素子で高速にゲーティングすることは困難であることが分かった。そこで、電気光学素子を用いないで、特定時間幅の光子のみを検出可能なイメージインテンシファイア付きCCDカメラシステムを用いる手法を考案、実験系の構築を進めた。 項目2に関しては、量子ウォークの時間発展に必要な偏光サニアック干渉計の設計および、必要な光学素子の購入を進めた。 項目3に関しては、空間次元が3次元以上の量子ウォークを用いた量子探索アルゴリズムに関する研究を進めた。2次元量子ウォークでは最適探索時間のサイト数依存性に補正項が加わるため、古典探索よりは高速であるが、グローバー・アルゴリズムによる最短探索時間を達成できない。そこで、空間次元が3次元以上の高次元2内部自由度量子ウォークに対し、グローバー・アルゴリズムの適用を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、令和3年度までの花弁状ビームの生成の研究を踏まえ、光子の高速ゲーティング法を検証した。その結果、当初計画のままでは、単一光子性の担保に問題が発生することを発見した。そこで、電気光学素子を使わない新たな手法を考案、それを踏まえて実験系の再設計を行った。また、量子ウォークの時間発展に必要な偏光サニアック干渉計の設計及び、実験系の構築の準備を進めた。さらに、理論的な検討についても、空間次元の拡張について研究を進めた。以上のように、ヘリカル境界を有する量子ウォークの実現に向けて着実に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、令和4年度で得た知見をもとに、花弁状のサイトを持った量子ウォーク系の時間発展を実現する。そのために、ダブプリズムを用いたサニアック偏光干渉計を完成させ、そこに特定の初期状態に対応する花弁状ビームを入力、量子ウォークの時間発展が実現できることを確認する。また、本研究の応用に向けた検討を進める。
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