本年度は、前年度に完成させた円偏光ガルバノ効果の測定系を用いて、極性の電子状態への寄与を、円偏光ガルバノ効果を介して検出することを目指した。バンドギャップ程度のエネルギーを持つ405 nmのレーザー光を用いて、極性を持つ層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイト鉛ヨウ化物に対して、垂直入射条件でテスト的な測定を行った。その結果、極性依存と思われる信号が見られたものの、ノイズと分離できる形で円偏光ガルバノ効果の観測をすることまでは出来なかった。今後、レーザー波長や円偏光の入射角などの測定条件の最適化した上で測定することが必要であることが分かった。 また近年、バルク光起電力効果に関する理論モデルとして「シフトカレント」モデルが盛んに議論されている。最近、この「シフトカレント」機構により、本来、ゼロバイアス光電流を発生出来ないエキシトン吸収でもバルク光起電力効果を発現する可能性が提案されている。本研究で研究対象としている層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型鉛ヨウ化物は、強いエキシトン吸収を示すことが知られており、エキシトンの束縛エネルギーも室温のエネルギーより一桁以上大きい為、エキシトン吸収の寄与を調べるのに適している。そこで、これまでに開発した層状有機・無機ハイブリッドペロブスカイト型鉛ヨウ化物を用いて、エキシトン吸収のエネルギーに対応する単色のレーザー光の照射下でバルク光起電力効果の観測を行い、上記の「シフトカレント」モデルの検証を試みた。その結果、エキシトン吸収に相当するエネルギーのレーザー光の照射により、ゼロバイアス光電流を観測することに成功した。
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