研究課題
本研究提案では、フェムト秒からピコ秒の時間幅を持つパルス電子線を用いた斜入射型の時間分解電子線回折装置を構築し、既存の透過型の時間分解電子線回折装置と組み合わせることで、時間一次元、空間三次元の超高速構造ダイナミクスの可視化技術を創出する。そして、本技術を活用して、無機物質、有機分子、炭素材料など多彩な物質の非平衡状態の構造変化と機能との関係を世界に先駆けて展開し、非平衡超高速構造変化と機能の関係解明のための次世代の超高速三次元構造ダイナミクス観測の科学技術基盤を開拓する。2021年度は、斜入射型の時間分解電子線回折装置を完成するとともに、透過型の時間分解電子線回折装置を用いて、本研究の分担者とともに酸化グラフェンのz軸方向のダイナミクス計測(グラフェンの二層化の構造ダイナミクス)をCarbon誌に論文が掲載された。このz軸方向のダイナミクス計測というのが、本研究の最終的な目的であり、これを新規の装置を用いて計測することを念頭において研究を進める。さらに、EuBaCo2O5.39に光照射によって生じる酸化物イオンの構造ダイナミクスに関する知見も得られ、新しい光フォトニクスというキーワードを見出すことに成功した。この研究は、Applied Materials Today誌に掲載され、筑波大学、東京工業大学、広島工業大学からプレスリリースされた。今後、本研究で培った基盤技術を用いて、さらなる物質の構造ダイナミクス計測を継続していく。
2: おおむね順調に進展している
本研究提案では、斜入射型の時間分解電子線回折装置を構築するとともに、既存の透過型の時間分解電子線回折装置を用いて、物質構造ダイナミクス計測を行う。現在のところ、斜入射型の時間分解電子線回折装置は完成しており、現在THz波によるパルス幅計測を行うなど新しい展開に向けて準備を進めているところである。また、既存の透過型の時間分解電子線回折装置を用いて、酸化グラフェンのz軸方向のダイナミクス計測にも成功しており、Carbon誌に論文を掲載した。また、EuBaCo2O5.39というコバルト酸化物において、光を用いてイオンを移動させるという新しい光機能を見出すことができ、応用研究に関する指針も見出している。このような達成状況にあるため区分(2)を選択した。
2022年度は、斜入射型の時間分解電子線回折装置のパルス幅をテラヘルツ波を用いて計測し、装置のパラメーターを明らかにするとともに新規装置及び既存の時間分解電子線回折装置を用いて研究提案の中で開発された物質の光照射下における構造ダイナミクス計測を実施する予定である。また、これらの結果は時間分解赤外分光装置や理論計算と整合することで、論文として発表していく予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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https://hadamasaki.com