研究課題/領域番号 |
20H01837
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
大饗 千彰 電気通信大学, 量子科学研究センター, 助教 (80787664)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非線形光学過程の自在操作 / 真空紫外レーザー分光 |
研究実績の概要 |
非線形光学過程はその過程に関係する光の位相関係に強く依存する。位相整合においては光の伝搬に伴って各位置における光生成がコヒーレントに積算されることで巨視的な光生成が達成される。このような伝搬に伴う積算効果とは別に、光の位相関係を任意に操作することで、それぞれの位置における非線形光学過程自身の進行方向を自在に操作することができる。本研究の目的は、このような自在な操作によって拓かれる非線形光学過程の新たな可能性を追求することにある。 本研究ではパラ水素分子による高次の4光波混合過程を自在に操作することで、未踏のレーザー技術である、真空紫外100-200 nm(1~8次光)全域で波長可変な単一周波数レーザーを実現する。 真空紫外域における100-200 nm全域で実用的な光強度で単一周波数レーザーを得るには、100%に近い効率で各次数の光を発生させるという非常に特徴的な非線形光学過程の操作が要求される。これまでの原理実証実験における実験結果とシミュレーション結果の比較から、100%に近い効率で選択的な光発生が可能な条件を探索した。その結果、ポンプレーザーの大強度化による光発生の効率の向上、さらに高い自由度(操作位置および位相操作範囲)で光位相関係の操作することで、100%に近い効率実現可能である予想された。上記の結果を踏まえて、今年度(2021年度)は上記の要求を満たす大強度ポンプレーザーを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形光学過程による光波長変換で生成される光の品質(周波数精度、ビーム品質など)は、非線形光学過程に用いられるレーザー光に強く依存する。高品質なレーザー光を基に光波長変換を行うことで、同様に高い品質を持つレーザー光を得ることが可能となる。本年度は高い光強度・ビーム品質を両立したレーザー光を発生する装置開発を行った。 高い光強度と高いビーム品質を両立するには、レーザー共振器内の光学素子上でのビーム径を大きく保ちつつ、いかにして高次の横モードを制限するかがカギとなる。2 mm程度のビーム径から一度タイトに絞り込む個所を共振器内に導入することで、横モードを制限できる共振器構成とした。 高効率な光波長変換が十分可能なパルスエネルギーが得られ、横モードについてもほぼシングルモードであることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で開発した大強度ポンプレーザー用いて、実際に各次数の光の発生効率が向上するか検証する。その結果を基にして、数値シミュレーションを利用して最適な位相操作の位置および回数を探索し、そのような光位相関係の操作が可能な機構を組み込むことで、100%に近い発生効率の実現を目指す。 その後、ここで確立した技術を真空紫外域へのスケーリングすることで、真空紫外域で波長可変な単一周波数レーザーの実現を目指す。
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