非線形光学過程はその過程に関係する光の位相関係に強く依存する。位相整合技術においては、光の伝搬に伴って各位置における光生成がコヒーレントに積算されるように位相関係を補正することで、巨視的な光発生が達成される。このような伝搬に伴う積算効果とは別に、媒質中の任意の相互作用長において光の位相関係を任意に制御することで、非線形光学過程自体の進行方向を自在に操作することができる。本研究の目的は、この新たな非線形光学過程の操作によって拓かれる新たな可能性を追求することにある。 本年度は本研究の基盤となっている“任意の相互作用長で任意の位相関係を実現する技術” によって、非線形光学過程の進行方向とその速度の操作だけでなく、従来よりも自由度の高い疑似時位相整合(QPM)の操作が可能であることを示した。パラ水素を用いたラマン共鳴4波混合過程で発生する1次のストークス・反ストークス光について、両方で同時にQPM条件を満たす、片方のみで満たす、両方満たさないという操作をオンデマンドに選択することに成功した。
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