研究課題
本研究ではこれまで、2次の非線形光学に基づく光子対生成において片方の光子のみを閉じ込めることにより、大規模な2光子周波数コムの生成あるいはそれに偏光エンタングルメントを付与する実験をおこなってきた。本年度は、コム間隔12.5GHzのエンタングル光子対源を用いて16チャンネルの周波数多重エンタングルメント配送した実験について詳細をまとめ、論文として報告した。通常の光源を単に周波数分割するだけではチャンネルクロストークが大きいか、さもなくば狭帯域フィルターによって大幅な輝度の低下を招く。本光源で生成される光子は、あらかじめエネルギーが共振器のフィネス程度で寄せ集められているため高輝度かつ高品質な周波数多重エンタングルメント光源となり、これは大規模量子インターネットの基盤技術となる。上記の実験は古典的な周波数多重技術に基づいており、異なる周波数ピーク間の位相情報を用いていなかった。しかし、位相情報も考慮すると、単一光子による量子周波数コムが通信のみならず量子計算にも有用であることを本年度の理論研究で示した:周波数オフセットが異なる2つの量子周波数コムを量子ビットとして符号化し汎用の光学デバイスを用いた時、従来の線形光学量子演算の枠組みにおいて、これまでに世界で得られている現実的な実験パラメータの範囲内で誤り耐性閾値を超える量子計算が可能であることを示した。本結果は、大規模な光量子演算の新しい基盤技術となる。量子周波数コムの状態評価には従来は非線形光学素子を用いていた。本研究において、周波数間の位相関係が異なる複数の周波数コムレーザーを参照光として準備し、これらと被測定光子の間で2光子干渉を行いその結果に基づき状態を推定するという、線形光学に基づく全く新しい状態評価手法を提案し原理検証を行った。これにより評価装置が簡便かつ効率的になり、これは大規模光量子情報処理の基盤技術となる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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