研究課題/領域番号 |
20H01840
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越野 幹人 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60361797)
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研究分担者 |
川上 拓人 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00750895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二次元物質 / グラフェン / モアレ超格子 |
研究実績の概要 |
今年度はツイスト2層グラフェンをはじめとするモアレ系を中心に様々な研究を行った。 1) ツイスト二層グラフェンにおける電子格子相互作用の理論: ツイスト二層グラフェンの電子の連続体モデルを格子歪みを 含めた形に拡張することで、格子振動と電子の相互作用ハミルトニアンを導いた。その結 果、格子振動を媒介とする電子間相互作用は、ツイスト角が小さくなるに連れて急速に大き くなることが示された。このモアレフォノン媒介電子間相互作用はツイスト二層グラフェン の超伝導の発現にも寄与している可能性がある。 2) ツイスト二層グラフェンにおけるツイスト角乱れの実験的観測: ツイスト二層グラフェンでの超伝導が大きな注目を集めている。この系の特徴は、電子構 造が層間の回転角 θ に極めて鋭敏に依存する点であり、超伝導の発現は魔法角と呼ばれる 1度付近のサンプルに限られる。殆どの理論計算では θ が一様であると仮定されている が、実験かとの共同により実はツイスト二層グラフェンでは θ が場所ごとに分布を持ってい ることを明らかにした。(Weitzmann Instutute, MIT, NIMS との共同研究)。 3) グラフェン/hBN モアレ超構造での磁気熱電効果による軌道磁気モーメントの観測: グラフェン/hBN モアレ系では、hBN によるモアレポテンシャルでグラフェンのディラッ クコーンにギャップが開き、そこでは幾何学的曲率に起源を持つ軌道磁気モーメントが生じ るが、その実験的測定は困難とされてきた。東京大学の町田グループとの共同により、この 軌道磁気モーメントが磁場中の熱電効果の測定によって直接観測できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膨大な原子からなるモアレ系は一般に理論的記述が困難であるが、連続体モデルを用いて複雑な電子格子相互作用を解析可能な形で定式化できたことは、今後の理論展開に向けて大きな一里塚となった。 また実験との共同研究で、魔法角ツイストグラフェンの電子構造のトポグラフィーの詳細な観測、さらに今までほとんど調べられてこなかったモアレ系における磁気熱電効果など、大きな成果があった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られたモアレ系の電子格子相互作用の理論を用いて、フラットバンド電子のフォノン媒介電子間相互作用の記述や、また非一様乱れのあるモアレ系の理論解析、また近年注目を集める3層以上のモアレ系の電子構造計算を計画する。
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