研究課題/領域番号 |
20H01845
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小澤 知己 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (80825993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子計量 / トポロジー / チャーン絶縁体 / 非エルミート |
研究実績の概要 |
本研究計画のサブテーマ「量子計量とトポロジーとの関係」に関連して、量子計量とベリー曲率の間に働く不等式に関して詳しい研究を行った。不等号の存在自体は以前から知られていたが、私は特に、不等号が等号になる条件を調べた。そして等号が成立するのは、運動量空間から量子状態の空間(ヒルベルト空間の部分ベクトル空間、ここでは特に複素グラスマン多様体)への写像が複素多様体間の写像として正則写像になることであることを証明した。等号の成立する模型は他の文献ではideal Chern bandなどと呼ばれ、分数量子ホール状態の構成との関連でも議論されている。分数量子ホール状態が安定的に存在できることが確実に知られているのは等号が成立し、かつ、ベリー曲率が運動量空間上一定値を取るような場合だが、運動量空間上の正則写像としてテータ関数を用いてこのような模型を漸近的に構成することにも成功した。このテーマに関しては論文を3本出版できた。 また、本研究計画のサブテーマ「非エルミート系における量子幾何テンソルの物理的帰結」に関連して、ゲインのある(非エルミートな)系においてトポロジカルエッジ状態からレーザー発振するトポロジカルレーザーに関する研究を行なった。特に、2次元チャーン絶縁体のエッジ状態からレーザー発振した実験的研究においてなぜエッジ状態から発振することが可能だったのかを理論的なモデルを提案することで説明することができた。このテーマに関してはイタリアの研究者との共同研究を通じ、論文を1本出版している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究費はこれで半分の期間が終了したことになるが、本研究計画のサブテーマ3つのうち「量子計量とトポロジーとの関係」に関してはほぼ当初の予定を達成し、「非エルミート系における量子幾何テンソルの物理的帰結」についてもおおよそ半分程度目標を達成したと言って良いと考えている。サブテーマの残りの1つである「量子計量と局在、特に多体局在の関係」は残りの期間で研究を進めたい。この現状を鑑み、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のサブテーマのうちまだ完成していない「非エルミート系における量子幾何テンソルの物理的帰結」について次年度さらに詳しい研究を行う予定である。特に、非エルミートベリー位相の定式化に関して実験家とも協力して明らかにしていきたい。また最終年度にかけて「量子計量と局在、特に多体局在の関係」を完成へと導くのが目標となる。ひとまずは考察すべき模型と、どのような計算をすべきかを検討したい。
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