本年度は本課題の最終年度であった。本課題は3つのサブテーマ「量子計量と局在、特に多体局在の関係」「量子計量とトポロジーとの関係」「非エルミート系における量子幾何テンソルの物理的帰結」のもとに進めていたが、前年度までにそのうちの2つ「量子計量とトポロジーとの関係」「非エルミート系における量子幾何テンソルの物理的帰結」はおおよそ完了していた。本年度は、最後に残っていた課題「量子計量と局在、特に多体局在の関係」を完成に導いた。 具体的には、多体局在を示す模型(ハードコアボソンのハバード模型に近接相互作用と不純物ポテンシャルを加えたもの)において多体局在を示すパラメータ領域と示さない領域において多体の量子計量がどのように振る舞いを変えるのかを、7粒子・14サイトまで厳密対角化法を用いて計算し、二つの領域において量子計量の漸近的振る舞いが違うことを示した。また、量子計量の漸近的振る舞いから多体局在を特徴づける長さスケール(局在長と考えられるもの)を提案した。これまでに理論的に提案されてきた多体局在の長さスケールはどれも実験的にアクセスするのが難しいものだった。量子計量は実験で測定可能な量であり、今回の結果を用いれば多体局在の長さスケールを実験的に調べることができると期待できる。これらの結果は論文として投稿中である。 この結果を持って、本研究課題で当初取り組む予定だったテーマは全て一応の完成を見たと言って良い。
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