研究課題/領域番号 |
20H01846
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
WENG QIANCHUN (翁銭春) 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (20835277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ熱測定 / 電子温度 / 格子温度 / エバネセント波 / テラヘルツ波 / 走査プローブ顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本研究では、電子・格子温度を測定する新しい走査プローブ顕微鏡(SNoiM)を開発し、従来不可能だった非平衡試料における局所的なエネルギー輸送・散逸ダイナミクスを解明する。SNoiMは外部照射光を用いない近接場計測法であるため、極微弱なテラヘルツ(THz)電磁波を検出する必要がある。従来の市販検出器では感度が2桁程度足りなかったため、本研究では量子構造お用いた超高感度THz検出器を開発・作製する。 本年度は、 (1)SNoiMの心臓部分として超高感度THz検出器(検出波長約18ミクロン)を作製した。さらに、フォトンカウンティングレベルの感度をもつ微小デバイスを開発した。実用可能な条件下単一光子の検出が実現したのは初めて成功した。さらに、通常のトンネル効果(tunnel effect)と電界効果(field-effect)を異なる新しい検出メカニズム(photo-gating effect)を発見し、光検出器のdark currentを大幅に抑制することができた(特許申請中;論文投稿準備中)。 (2)SNoiMを構築するため、THz集光光学系(ゲルマニウム)を設計/作製し、自作した超高感度THz検出器と組み合わせた。さらに、機械式冷凍機タイプTHz共焦点顕微鏡を構築して、外部光を照射していない状態でサンプルのFar-field熱画像が取得できた。検出波長は約18ミクロンですが、Far-field熱画像の分解能は30ミクロ程度(回折限界)であり。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度コロナの原因で必要な物品(ナノスケール移動ステージ、電気測定装置など)を購入することが困難であり、SNoiM装置の開発が遅れていた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度THz共焦点顕微鏡(自作超高感度検出器を導入した)を構築して、Far-field信号が取得できた。今後の研究の推進方策は: (1)ナノスケール(超解像)で温度を測定するため、探針を導入する。そのため、真空で動作する原子力顕微鏡(AFM)を構築する。構築したAFMとTHz共焦点顕微鏡を組み合わせて、外部光を照射していない状態でNear-field(標準的なサンプル:通電金属細線)を測定する。 (2)同時に、新しい測定試料(半導体デバイス、2次元材料、トポロジカル物質)を設計・作製。 (3)さらに、既存の超高真空走査型トンネル顕微鏡(STM)に基づいて低温SNoiMの開発が始まる。微小光学系を設計・作製、超高感度検出器の組み込み、STMに導入する。
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