研究実績の概要 |
(1) カイラル対称結晶構造への相転移が絶対零度に抑制された構造量子臨界点とその近傍での超伝導研究をした。La3Co4(Sn1-xInx)13のx < 0.08において構造相転移が消失し、バルクの超伝導転移温度がx = 0での2.7 Kからx = 0.14では3.4 Kに上昇した。さらに部分的には6.3 K程度の超伝導領域も見られ、構造相転移の消失とともに超伝導が安定化する傾向にある。 (2) 放射光X線散乱と中性子散乱の測定結果に基づいてNd3Rh4Sn13のカイラル構造相転移と反強磁気構造を決定し、トポロジカル電子による反強磁気秩序状態の実現可能性を指摘し、成果論文をJPS Conference Proceedingsに発表し、さらに詳細な結果がPhysical Review B誌に2024年度に入ってから掲載され、 Editors' Suggestionに選定された。 (4) Eu3Rh4Sn13, Eu3Ir4Sn13, Gd3Co4Sn13の結晶構造相転移も観測したが、精密な結晶構造解析の結果、Ln3Tr4Sn13 (Ln = La, Ce, Nd; Tr = Co, Rh, Ir)でのカイラル対称立方晶構造とは異なる構造であると考えられる。通常、Eu, Gd系は中性子吸収の効果が強く測定は難しいが、本研究で実験方法を工夫することにより反強磁気秩序の中性子回折測定に成功した。また不完全な磁気秩序相の可能性がわかり、新たに見出した結晶構造のもとでの磁気フラストレーション系であると考えられる。 (4) 都立大グループによって超伝導が発見されたY3Rh4Ge13の結晶構造を明らかにする共同研究を実施し、放射光X線回折によりカイラル対称構造を明らかにし、新たな超伝導対称性を示す物質である可能性を指摘した。この研究成果をJ. Alloy and Compounds誌に発表した。
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