研究課題
本研究課題では、我々が世界に先駆けて成功したハーフメタルにおける多体効果の観測をさらに推し進め、ハーフメタルの特異な多体電子状態の解明を目指して、バルク敏感・高分解能スピン分解光電子分光を主たる実験手法として、ハーフメタルおよびハーフメタル候補物質のスピン分解電子状態を実験的に明らかにすることを研究目的とする。2020年度は、CoS2においてスピン分解角度分解光電子分光により実験的に観測されたスピン状態に依存したバンドリノーマリゼーション効果に対する理解を深めるため、研究協力者によるバンド計算およびDMFT計算との比較をおこなった。その結果、スピン状態に依存したバンドのリノーマリゼーション効果の傾向(マジョリティスピンバンドに比べてマイノリティスピンバンドのリノーマリゼーション効果がより大きい)は、DMFT計算により、より良く再現されることがわかった。このことは、観測されたスピン状態に依存したバンドのリノーマリゼーション効果がハーフメタルの特異な電子状態であることを示唆する。その一方、実験によるマイノリティスピンバンドのリノーマリゼーションが、DMFT計算よりも大きいこともわかった。CrO2に関しては、これまで主として電子状態の研究を行なってきた(100)膜試料に加えて、磁化容易軸が表面垂直方向を向くため応用的に重要な(001)膜試料について、表面でのハーフメタル性の検証を目指して試料合成を進めた。
3: やや遅れている
本研究では、バルク敏感高分解能スピン分解光電子分光を主たる研究手法とした電子状態の直接観測により、ハーフメタルにおける多体効果が電子状態に与える影響を実験的に明らかにすることを目的として研究を進めている。具体的には、CrO2におけるNQP状態の運動量依存性の観測、(2) Co1-xFexS2におけるハーフメタル性の検証とNQP状態の探索/直接観測およびスピン依存電子相関効果の観測、 (3)マンガン酸化物やホイスラー化合物など他のハーフメタル(候補物質)にも測定対象を拡大し、ハーフメタル性の検証とNQP状態の探索/直接観測、を行う。今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大への対応のため、外部施設を利用した共同利用実験の計画を進めることが難しく、CoS2におけるスピン依存電子相関効果の研究等は進展したものの、計画通り研究を進めることができなかった。この状況をふまえ、上記の判断とした。
本年度実施できなかった研究を実施する。利用を予定していた共同利用装置のアップグレードがおこなわれるため、実験計画の一部がさらに遅れる可能性も出て来た。研究室の実験装置を用いて実施できる研究を進めるとともに、理論家との連携により既に取得しているデータの解析を進める。
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