圧力磁場誘起らせん秩序の観測によるキラリティ自発形成機構の研究

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20H01854
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 松村 武 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (00312546)
• 研究分担者: 石松 直樹 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 特定准教授 (70343291)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: キラル磁性体 / らせん磁気秩序 / 空間反転対称性 / 共鳴X線回折

研究実績の概要

2022年に発表したEuIrGe3のサイクロイド磁気構造では，ヘリシティが決定されていなかった．結晶構造に反転対称性がある場合は，この巻き方がどちらであってもエネルギーに差はなく，両者がドメインを形成して共存するのだが，反転対称性をもたないEuIrGe3では，Dyzaloshinskii-Moriya型の反対称交換相互作用のため，サイクロイドヘリシティの縮退が解け，片方に決まるはずである．それを円偏光X線を使った共鳴X線回折によって調べた結果，4つのqベクトルに対応するサイクロイド磁気ドメインがそれぞれ固有のヘリシティを有していることが確認された．しかも，それらのヘリシティはこの結晶構造がもつC4vの対称性（4回対称軸のc軸を含む鏡映面が4枚）を反映したものになっており，反対称相互作用が確かに働いた結果であることも明らかになった．JPSJに発表された論文はHotTopicsに取り上げられた．
EuNiGe3については磁場中中間相が磁気スキルミオンの歪んだ三角格子秩序相であることを見いだした．円偏光を利用した共鳴X線回折による詳しい観測の結果，ゼロ磁場ではヘリカル磁気構造が4つのドメインを形成し，いずれもヘリシティが単一に選択され，それらが結晶の4回回転軸および鏡映対称面を反映した形になり，反対称相互作用が働いていることがわかった．磁場中中間相では，q1+q2+q3=0の関係を満たす3つのq成分によるtriple-q構造が4つのドメインを作る．ここで，3つのq成分が同一らせんヘリシティに統合されることがわかった．注目すべき発見は，この統合過程で元々の反対称相互作用が逆転している成分があることで，スキルミオン格子形成の駆動力としては反対称相互作用よりも強い作用があることが明らかになった点である．arXiv:2306.14767に発表したこの成果は現在論文投稿中である．

現在までの達成度 (段落)

令和5年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和5年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [国際共同研究] ANSTO(オーストラリア)
  • 国名: オーストラリア
  • 外国機関名: ANSTO
• [雑誌論文] Collinear Antiferromagnet SmPt6Al3 with a Sm Honeycomb Structure Centered by Pt Triangles (2024)
  • 著者名/発表者名: R. Oishi, Y. Shimura, K. Umeo, T. Onimaru, T. Matsumura, M. Tsukagoshi, K. Kurauchi, H. Nitta, T. Takabatake
  • 雑誌名: J. Phys. Soc. Jpn. 巻: 93 ページ: 034707-1-6
  • DOI: 10.7566/JPSJ.93.034707
  • 査読あり
• [雑誌論文] Helicity Selection of the Cycloidal Order in Noncentrosymmetric EuIrGe3 (2023)
  • 著者名/発表者名: K. Kurauchi, T. Matsumura, M. Tsukagoshi, N. Higa, M. Kakihana, M. Hedo, T. Nakama, and Y. Onuki
  • 雑誌名: J. Phys. Soc. Jpn. 巻: 92 ページ: 083701-1-4
  • DOI: 10.7566/JPSJ.92.083701
  • 査読あり
• [雑誌論文] Discovery of antiferromagnetic chiral helical ordered state in trigonal GdNi3Ga9 (2023)
  • 著者名/発表者名: S. Nakamura, T. Matsumura, K. Ohashi, H. Suzuki, M. Tsukagoshi, K. Kurauchi, H. Nakao, and S. Ohara
  • 雑誌名: Phys. Rev. B 巻: 108 ページ: 104422-1-7
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.108.104422
  • 査読あり
• [雑誌論文] Quadrupolar Domain Selection by Magnetic Field in DyNi3Ga9 (2023)
  • 著者名/発表者名: M. Tsukagoshi, T. Matsumura, S. Nakamura, and S. Ohara
  • 雑誌名: J. Phys. Soc. Jpn. 巻: 92 ページ: 115001-1-2
  • DOI: 10.7566/JPSJ.92.115001
  • 査読あり
• [雑誌論文] Stability and Metastability of Li3YCl6 and Li3HoCl6 (2023)
  • 著者名/発表者名: H. Ito, Y. Nakahira, N. Ishimatsu, Y. Goto, A. Yamashita, Y. Mizuguchi, C. Moriyoshi, T. Toyao, K.-i. Shimizu, H. Oike, M. Enoki, N. Carolina R. Navarro, A. Miura, and K. Tadanaga
  • 雑誌名: Bull. Chem. Soc. Japan 巻: 145 ページ: 21807-21816
  • DOI: 10.1246/bcsj.20230132
  • 査読あり
• [雑誌論文] Lattice constants and magnetism of L10-ordered FePt under high pressure (2023)
  • 著者名/発表者名: S. Sawada, K. Okai, H. Fukui, R. Takahashi, N. Ishimatsu, H. Maruyama, N. Kawamura, S. Kawaguchi, N. Hirao, T. Seki, K. Takanashi, S. Ohmura, and H. Wadati
  • 雑誌名: Appl. Phys. Lett. 巻: 122 ページ: 152406-1-5
  • DOI: 10.1063/5.0139441
  • 査読あり
• [学会発表] 反転心を持たない正方晶EuNiGe3における歪んだ磁気スキルミオン三角格子の形成 (2024)
  • 著者名/発表者名: 松村武, 倉内憲伸, 塚越舜, 新田大翔, 比嘉野乃花, 垣花将司, 辺土正人, 仲間隆男, 中尾裕則, 大貫惇睦
  • 学会等名: 日本物理学会 2024年春季大会
• [学会発表] CeMnSiの磁場誘起相転移II (2024)
  • 著者名/発表者名: 谷田博司, 松岡紘人, 川村幸裕, 比嘉野乃花, 松村武, 三本啓輔, 柳有起, 山田武見, 室裕司, 福原忠, 並木孝洋, 桑井智彦
  • 学会等名: 日本物理学会 2024年春季大会
• [学会発表] カイラル金属磁性体Gd(Ni1-xCox)3Ga9の反強磁性らせん磁気秩序 (2024)
  • 著者名/発表者名: 中村翔太, 渡邊俊介, 塚越舜, 倉内憲伸, 松村武, 中尾裕則, 大原繁男
  • 学会等名: 日本物理学会 2024年春季大会
• [学会発表] Single helicity of the triple-q magnetic order in magnetic fields in cubic chiral antiferromagnet EuPtSi (2023)
  • 著者名/発表者名: T. Matsumura, C. Tabata, K. Kaneko, H. Nakao, M. Kakihana, M. Hedo, T. Nakama, and Y. Onuki
  • 学会等名: International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2023
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Reduction of the crystal symmetry in a chiral magnet DyNi3Ga (2023)
  • 著者名/発表者名: M. Tsukagoshi, T. Matsumura, S. Nakamura, and S. Ohara
  • 学会等名: International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2023
  • 国際学会
• [学会発表] Disappearance of antiferromagnetic order of CeCoSi studied by specific heat under pressure (2023)
  • 著者名/発表者名: K. Kurauchi, T. Matsumura, S. Kishida, T. Tagawa, N. Higa, K. Umeo, and H. Tanida
  • 学会等名: International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2023
  • 国際学会
• [学会発表] 比熱測定によるCeMnSiの磁場誘起相転移の観測 (2023)
  • 著者名/発表者名: 新田大翔, 比嘉野乃花, 松村武, 谷田博司
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [学会発表] 反転心を持たない正方晶化合物EuNiGe3が形成する歪んだ三角格子磁気スキルミオン (2023)
  • 著者名/発表者名: 倉内憲伸, 松村武, 塚越舜, 新田大翔, 比嘉野乃花, 垣花将司, 辺土正人, 仲間隆男, 中尾裕則, 大貫惇睦
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [学会発表] カイラル金属磁性体GdNi3Ga9の反強磁性らせん磁気秩序 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中村翔太, 松村武, 大橋一諒, 鈴木大斗, 塚越舜, 倉内憲伸, 中尾裕則, 大原繁男
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [学会発表] ラマン散乱による正方晶CeCoSiの構造相転移の研究 (2023)
  • 著者名/発表者名: 中島隆真, 松村武, 長谷川巧, 谷田博司
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [学会発表] 反転心を持たない磁性体EuTGe3(T=Ir, Ni, Rh)におけるらせん磁気構造と反対称磁気相互作用 (2023)
  • 著者名/発表者名: 松村武, 倉内憲伸, 塚越舜, 新田大翔, 比嘉野乃花, 垣花将司, 辺土正人, 仲間隆男, 中尾裕則, 大貫惇睦
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [学会発表] キラル磁性体DyNi3Ga9のらせん磁気秩序と四極子秩序の競合 (2023)
  • 著者名/発表者名: 塚越舜, 松村武, 中村翔太, 大原繁男
  • 学会等名: 日本物理学会 2023年年次大会
• [備考] T. Matsumura's Web Page
  • URL: https://home.hiroshima-u.ac.jp/tmatsu/Matsumura/Home.html