研究課題
Zak位相という現代の電気分極物理の理論の基盤をなす量子位相の概念を用いて、新しい表面金属状態を開拓し、そのスピントロニクス機能を開拓することを大きな目標として研究を進めている。特にトポロジカル絶縁体とは異なる物質系に着目し、スピントロニクス技術を支える物質の幅を広げることが研究の特色となっている。現在すでに全体研究目標を達成している。具体的には、候補物質である非磁性絶縁体金属間化合物の薄膜においてZak位相由来のトポロジカル表面強磁性金属状態の開拓に成功し、その大きなスピン軌道結合によって非相反電気伝導(pn接合を用いないダイオード効果)や電流誘起磁化反転(不揮発性情報担体となる磁化の電気的制御)といったスピントロニクス機能を実現している。一般に巨大なスピン軌道物性機能の実現には重元素固有の強いスピン軌道相互作用が必須であると考えられてきたが、これらの結果はその常識を打ち破り、軽元素化合物に潜んだ表面スピンオービトロニクス機能を顕在化させたものである。これらの成果を論文として出版し[Science Advances 7, abj0498(2021)]、プレスリリースや新聞掲載により広く情報発信を行なった。さらに当初の目標を大きく超えて、Zak位相由来の新規表面状態の電子・スピン状態の直接観測の実験を実施中である。具体的にはX線磁気円二色性(XMCD)によって表面の軌道とスピンモーメントの分離や分布を計測しており、結果について日本物理学会で発表を行なった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績の概要に記した通り、本研究の当初の目標であるZak位相を基軸とした表面状態開拓とそのスピントロニクス機能をすでに達成することができた。これは実験・理論の協力により研究が円滑に推進できた結果である。本結果についてまとめた論文も出版し、プレスリリースや新聞掲載といった情報発信もできている。
これまでの成果を基盤に、Zak位相由来の新規表面状態の微視的起源の解明に迫る。具体的には引き続きX線スペクトロスコピーによる軌道・スピン状態の直接観測に挑戦する。また第一原理計算によって表面の構造最適化などを行い、表面敏感な物性に対する影響を精査する。これらの課題は当初の研究目標を大きく超えた発展内容である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
Physical Review B
巻: 103 ページ: L220410
10.1103/PhysRevB.103.L220410
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118 ページ: e2105422118
10.1073/pnas.2105422118
Science Advances
巻: 7 ページ: abj0498
10.1126/sciadv.abj0498
https://researchmap.jp/n_kanazawa
https://hrym.weebly.com/