研究課題
電気分極を記述する現代的理論体系の根幹をなしているZak位相という量子位相の概念を応用して、新しいトポロジカル表面状態を開拓し、反転対称性の破れた表面におけるスピン軌道相互作用に由来したスピントロニクス機能を設計することが本研究の目標である。昨年度までに当初の全体研究計画を達成していた状況であった。具体的には、金属間化合物FeSiという非磁性絶縁体のエピタキシャル薄膜の合成に成功し、その表面においてZak位相由来の表面強磁性金属状態が発現することを観測した。特にその表面はほぼ量子化したZak位相を有するため、大きな電気分極とそれに起因した強いRashba型スピン軌道結合が現れている。その特性を利用することによって、非相反電気伝導(pn接合を用いないダイオード効果)や電流誘起磁化反転(情報記録担体となる磁化の向きの電気的制御)を実現することができた。一連の成果は論文出版、プレスリリース、新聞掲載として報告することができていた。本年度は、このFeSiの表面状態に対して接合物質を適切に選択することにより、その磁気状態・スピン軌道結合状態を制御することに成功し、電流誘起磁化反転機能の室温動作を実証できた。これにより既存のスピントロニクスデバイスの課題の一つである「希少な重元素の含有」の制約に囚われない、物質設計指針を示すことができた。これらの成果は、論文[Advanced Materials 35, 2206801 (2023).]、プレスリリース、特許申請としてまとめることができた。これらの成果は当初の目的を遥かに越え、現実的な応用へのブレークスルーとなる要素技術になる可能性を示せた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 107 ページ: 024406
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https://researchmap.jp/n_kanazawa
https://sites.google.com/view/kanazawa-lab