研究課題/領域番号 |
20H01864
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
金子 耕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30370381)
|
研究分担者 |
伊藤 孝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (10455280)
田端 千紘 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (60783496)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中性子散乱 / 放射光実験 / muSR / トポロジカル磁気秩序 / 磁気スキルミオン格子 / Eu化合物 |
研究実績の概要 |
本課題では、これまでMnSiなどのd電子系を中心に研究されてきた、磁気スキルミオンを代表とするトポロジカルに保護された秩序状態について、新たにf電子系でのトポロジカル磁気秩序に着目し、中性子、放射光、ミュオンの量子ビームプローブを相補的に駆使して、静的・動的の両面から、その本質に迫ることを目的としている。 本年度はこれまでに代表者らが発見したEu系初の磁気スキルミオン化合物EuPtSiについて、muSRおよびNMRを用いてダイナミカルな特性を調べた。両者の相補的な測定から、Euスピンの顕著な臨界揺らぎの存在と、その揺らぎが磁場の印加により大幅に抑制されることを明らかにした。これらの特徴的なスピンダイナミクスから、EuPtSiにおける磁気フラストレーションの存在、及びそれが短周期の磁気スキルミオン格子の実現に寄与している可能性を明らかにした。 また新たなEu系の候補物質として、正方晶のEuAl4に着目して研究を進めた。ゼロ磁場で現れる多段秩序について、単結晶中性子回折実験から各相の磁気秩序波数について決定するとともに、格子歪みの存在について明らかにした。さらに磁場誘起相についても中性子及びX線散乱実験から多段の磁気スキルミオン相の実現を報告した。 以上、各量子ビームプローブを相補的に用いてることで、主にEu系のトポロジカル磁気秩序について、静的・動的構造の両面において新たな側面を明らかにすることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度については、Eu系化合物において中性子、放射光、muSRの各測定において着実な成果が得られたこと、また物質面についても新たな化合物に展開することが出来た点では、順調な進展が得られた、また主な実験施設と想定していた研究炉JRR-3が順調に再稼働し、装置調整も一段落したことから、今後より一層の発展も期待出来る。一方、予定していた海外施設における実験実施は、新型コロナウイルスの影響のため依然として困難であり、制約をうけている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も中性子、放射光、muSRの3プローブの相補利用による研究展開を予定している。今後は、EuPtSiの印加磁場異方性の研究を通じた磁気スキルミオン実現を担う相互作用の解明、新たなEu、Gd化合物への展開に加え、軌道磁気モーメントを有する他の希土類化合物へ研究を展開させることで、f電子系におけるトポロジカル磁気秩序について、その特徴を明らかにし、理解を深めることを計画している。
|