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2021 年度 実績報告書

アクティブマターのキラルな秩序渦と乱流状態の幾何的普遍性の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H01872
研究機関九州大学

研究代表者

前多 裕介  九州大学, 理学研究院, 准教授 (30557210)

研究分担者 宮崎 牧人  京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (40609236)
島本 勇太  国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 准教授 (80409656)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードアクティブマター / バクテリア / マイクロ流体デバイス / 秩序形成 / キラリティー / 乱流 / 非平衡物理学
研究実績の概要

自律的に動き,密度の高まりと共に集団となって秩序だった運動を示す物質群をアクティブマターという.本研究の目標は,アクティブマターのなかでも隠れた渦の秩序性を持つアクティブ乱流現象をモデルとして,幾何学的特徴をもとに秩序形成の原理を明らかにすることにある.これまでに遊泳バクテリアが示すアクティブ乱流から規則的な渦運動を抽出する微小流体デバイスを設計し,多数の相互作用する秩序渦が示すパターン形成には幾何的ルールが存在することを明らかにした.同じ回転方向から反対向きの回転方向の渦ペアに転移する際には基本転移点となる幾何的制約があり,このルールが遊泳バクテリアのみならずキネシン分子モーターに駆動される微小管集団運動でも成立することを実験,数値計算,理論で示した.さらに興味深いことに,運動の左右対称性が破れたキラルアクティブマターでは,基本転移点からのズレがキラリティーを介した配向相互作用の相対的な強さを表すという幾何的ルールに拡張できることを新たに見出した.以上の成果から,アクティブ乱流における秩序渦の幾何的普遍性をキラリティーをも含む形で明らかにしている.今後は,流動的な乱流状態から固体的なジャミング状態への「流体固体転移」を幾何的ルールから評価することを計画している.予備的結果では,乱流状態でもジャミング状態でも基本転移点からのズレは微小であることを示すデータが得られており,その詳細をActive Vertexモデルの理論的解析と数値計算を用いて明らかにする予定である.さらに,集団運動と3次元の形態形成,細胞分化が密接に関わる培養細胞系でも幾何的ルールを計測する.以上の研究をもとに,キラリティーやトポロジーといった幾何的構造からアクティブマターの基本原理を探求し,さらに非平衡多体系として生命現象をとらえる研究基盤の創出につなげる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自律的に動き,密度の高まりと共に集団となって秩序だった運動を示す物質群をアクティブマターという.本研究の目標は,アクティブマターのなかでも隠れた渦の秩序性を持つアクティブ乱流現象をモデルとして,幾何学的特徴をもとに秩序形成の原理を明らかにすることにある.これまでに遊泳バクテリアが示すアクティブ乱流から規則的な渦運動を抽出する微小流体デバイスを設計し,多数の相互作用する秩序渦が示すパターン形成には幾何的ルールが存在することを明らかにした.同じ回転方向から反対向きの回転方向の渦ペアに転移する際には基本転移点となる幾何的制約があり,このルールが遊泳バクテリアのみならずキネシン分子モーターに駆動される微小管集団運動でも成立することを実験,数値計算,理論で示した.さらに興味深いことに,運動の左右対称性が破れたキラルアクティブマターでは,基本転移点からのズレがキラリティーを介した配向相互作用の相対的な強さを表すという幾何的ルールに拡張できることを新たに見出した.渦回転の左右対称性が破れたキラルなバクテリア秩序渦の計測により,その関係が実験的にも成立することを明らかにした.以上の成果から,アクティブ乱流における秩序渦の幾何的普遍性をキラリティーをも含む形で明らかにすることが出来た.

今後の研究の推進方策

遊泳バクテリアの集団運動とその渦ペア秩序転移でみられた幾何的ルールは,アクティブマターの詳細によらない配向相互作用の幾何的普遍性を反映すると共に,対象とする集団運動に特有の性質を評価するために基本転移点からのズレの計測が有効であることを示している.この転移点を詳細に計測することで,集団運動の状態遷移を評価することを試みる.具体的には,上皮細胞は増殖により密度が増加し,集団運動の振る舞いが遷移することが知られており,流動的な乱流状態から固体的なジャミング状態への「流体固体転移」を幾何的ルールから評価することを予備的に進めている.これまでの結果では,乱流状態でもジャミング状態でも基本転移点からのズレは微小であるが,渦ペア秩序は遊泳バクテリアのような極性配向の集団運動とは異なる点がある.その詳細を実験と理論,またActive Vertexモデルといった数値計算を用いて明らかにする.その他,集団運動と3次元の形態形成,細胞分化が密接に関わる培養細胞系でも幾何的ルールを計測する準備が完了し,位相欠陥による流れの発生が基本点移転からのズレとして現れることも見出している.以上の研究をもとに,キラリティーやトポロジーといった幾何的構造からアクティブマターの基本原理を探求し,さらに非平衡多体系として生命現象をとらえる研究基盤の創出につなげる.

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 3件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] ミネソタ大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ミネソタ大学
  • [雑誌論文] Protein Needles Designed to Self‐Assemble through Needle Tip Engineering2022

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi Kosuke、Fukuyama Tatsuya、Uchihashi Takayuki、Furuta Tadaomi、Maeda Yusuke T.、Ueno Takafumi
    • 雑誌名

      Small

      巻: 18 ページ: 2106401~2106401

    • DOI

      10.1002/smll.202106401

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phase Separation and Protein Partitioning in Compartmentalized Cell-Free Expression Reactions2021

    • 著者名/発表者名
      Kato Shuzo、Garenne David、Noireaux Vincent、Maeda Yusuke T.
    • 雑誌名

      Biomacromolecules

      巻: 22 ページ: 3451~3459

    • DOI

      10.1021/acs.biomac.1c00546

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Edge current and pairing order transition in chiral bacterial vortices2021

    • 著者名/発表者名
      Beppu Kazusa、Izri Ziane、Sato Tasuku、Yamanishi Yoko、Sumino Yutaka、Maeda Yusuke T.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 118 ページ: e2107461118

    • DOI

      10.1073/pnas.2107461118

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Controlling Collective Motion of Kinesin-Driven Microtubules via Patterning of Topographic Landscapes2021

    • 著者名/発表者名
      Araki Shunya、Beppu Kazusa、Kabir Arif Md. Rashedul、Kakugo Akira、Maeda Yusuke T.
    • 雑誌名

      Nano Letters

      巻: 21 ページ: 10478~10485

    • DOI

      10.1021/acs.nanolett.1c03952

    • 査読あり
  • [学会発表] 無細胞発現系における液滴形成と成長のダイナミクス2022

    • 著者名/発表者名
      加藤修三, David Garenne, Vincent Noireaux, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] 上皮細胞の集団運動とペアリング秩序転移2022

    • 著者名/発表者名
      繁田和幸, 別府航早, 田中あや, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] 筋芽細胞集団が示す位相欠陥とエッジ流れの幾何的制御2022

    • 著者名/発表者名
      家永竜, 別府航早, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] アクティブマター:生命システムの理解と制御の新展開2021

    • 著者名/発表者名
      前多裕介
    • 学会等名
      東京大学化学生命工学専攻 談話会
    • 招待講演
  • [学会発表] Understanding the instability of intracellular organization in synthetic cell2021

    • 著者名/発表者名
      前多裕介
    • 学会等名
      第59回 日本生物物理学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] アクティブな界面摩擦と流体抵抗の幾何学的バランスが決めるアクトミオシン液滴の自発運動2021

    • 著者名/発表者名
      坂本 遼太, Ziane Izri, 島本勇太, 宮﨑 牧人, 前多 裕介
    • 学会等名
      第59回 日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 細胞区画内のセルフリー遺伝子発現における液液相分離現象とぬれ効果2021

    • 著者名/発表者名
      加藤 修三, David Garenne, Vincent Noireaux, 前多 裕介
    • 学会等名
      第59回 日本生物物理学会年会
  • [学会発表] アクティブゲルの対称性と動きの非平衡力学2021

    • 著者名/発表者名
      前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
    • 招待講演
  • [学会発表] タンパク質針の相互作用と凝集による2次元集団秩序形成2021

    • 著者名/発表者名
      福山達也, 菊池幸祐, 上野隆史, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] アクティブ細胞骨格系における集団運動と幾何的制御2021

    • 著者名/発表者名
      荒木駿也, 別府航早, Arif Md. Rashedul Kabir, 角五彰, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] バクテリア乱流ダイナミクスとフラストレートされた秩序渦の制御原理2021

    • 著者名/発表者名
      別府航早, Ziane Izri, 住野豊, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] 細胞区画内のセルフリー遺伝子発現における液液相分離現象と濡れ効果2021

    • 著者名/発表者名
      加藤修三, David Garenne, Vincent Noireaux, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] 3次元ハイドロゲルが誘起する上皮細胞の集団運動2021

    • 著者名/発表者名
      繁田和幸, 福山達也, 高橋陸, 田中あや, 前多裕介
    • 学会等名
      日本物理学会2021年度秋季大会
  • [備考] 遊泳微生物における新たなキラル集団運動現象を発見

    • URL

      https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/666

  • [備考] 生体分子モーターによる群れ運動を操る幾何法則を解明

    • URL

      https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/702/

  • [備考] 動いて並んでつながって。タンパク質が幾何学模様に!

    • URL

      https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/712

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公開日: 2022-12-28  

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