研究課題/領域番号 |
20H01874
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
栗田 玲 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20579908)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 泡沫 / ソフトマター / 非平衡 |
研究実績の概要 |
泡沫とは液体中に気泡が内包されている状態のことをいい,構成成分は液体と気体という流体だけであるにも関わらず,弾性的な性質を持ち形状を保つことができる.このような系をジャミング系という.ジャミング系は泡沫以外にもエマルジョンや粉体,高分子ゲルなどが含まれ,食品や洗剤,化粧品,消化剤,製造過程から生体細胞内まで様々な場面でみることができる.その中でも泡沫は液体分率に依存して多彩な性質を有する.液体分率が小さい時は強い吸水性や吸油性を示し,液体分率が大きくなると流動性を示すようになる.ミクロな内部構造変化がマクロの変形や弾性に影響する複雑な現象のため,泡沫の動的性質もよくわかっていない.このように泡沫の有用性にも関わらず,多くの現象の物理的起源は未解明なままであった. 本研究課題では,泡沫のマクロな変形を対象に研究を行なってきている.泡沫が崩壊する時,シャボン玉のように液膜が破れるだけではなく,その液体の輸送が重要となることを明らかにした.液体輸送時に液滴となり放出,さらに遠くにある他の液膜を破り,また液滴が形成される,という雪崩的崩壊が起こることを見出した.さらに,壁に吹き付けられたときの泡沫の挙動も調べた.泡沫から液体だけが流れ出る条件を実験から明らかにし,理論と一致することを見出した.このことは,安定的に壁にとどまるための条件を明らかにしたことになり,薬品の効果的塗布などの産業応用も考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では,泡沫のマクロな変形を対象に研究を行なってきている.泡沫が崩壊する時,シャボン玉のように液膜が破れるだけではなく,その液体の輸送が重要となることを明らかにした.液体輸送時に液滴となり放出,さらに遠くにある他の液膜を破り,また液滴が形成される,という雪崩的崩壊が起こることを見出した.この成果は,アメリカ物理学会誌が出版するPhysics Todayでも紹介され,世界的な評価を受けている.さらに,壁に吹き付けられたときの泡沫の挙動も調べた.泡沫から液体だけが流れ出る条件を実験から明らかにし,理論と一致することを見出した.このことは,安定的に壁にとどまるための条件を明らかにしたことになり,薬品の効果的塗布などの産業応用も考えられる.このようなインパクトの大きな成果を上げることが出来たため,当初以上に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では,これまで明らかにしてきた動的挙動だけでなく,泡沫内部への油の拡散,塗り拡げについても調べていく.これらについてもすでに予備的には実験が進んでおり,この予備実験から得られている内容を定量的に調べていく予定である.これらの成果について,学術論文で発表し,また,プレスリリースすることで社会への還元を考えている.
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