研究課題/領域番号 |
20H01879
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井 通暁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00324799)
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研究分担者 |
小野 靖 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
神尾 修治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80705525) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気リコネクション / 電子加速 / 球状トカマク |
研究実績の概要 |
高ガイド磁場下のリコネクション下流域における電子加速を促進することを目的とし、複数のIGBTスイッチによる分割設置型電極の高速制御実験を実施した。面内静電場と誘導電場の同時計測により、電極の短絡/開放動作により接続された磁力線上の静電場を直接的に制御できることに加えて、下流域ドリフト速度の変化により誘導電場にも差異が現れ、結果的にリコネクション点からのプラズマ流出速度が二次的な影響を受けることが明らかになった。この実験結果は、高ガイド磁場の存在下では下流域遠方の境界条件が磁気リコネクション速度に影響を与えることを初めて明確に示すものであり、室内実験や天体現象において下流域の巨視的磁場形状と各種界面との接触の重要性を示唆している。特に本研究で能動制御を導入したことにより、スイッチのトリガーと面内静電場の変化、誘導電場の変化のタイミングの違いから、荷電分離過程を定量的に評価することが可能となった。 分光計測結果から、面内電場の抑制による磁力線方向イオン流速の増加が観測された。このことは、電極を用いた下流域境界条件制御が荷電粒子の磁力線方向加速および磁気リコネクションの際のエネルギー変換過程に重大な影響を与えうることを示している。一方で、室内実験の時間空間スケールにおいては電流層内の磁力線形状の時間変化による加速効果は限定的であることが確認された。 本年度の成果により、特に室内実験において下流域磁力線の幾何構造および実験装置と接触する場合にはその境界条件が高ガイド磁場下の磁気リコネクション現象を本質的に変容しうることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下流域境界条件を能動的に制御するという手段を導入したことにより、磁気リコネクションイベント中の条件変更という新たな要素を室内実験研究に持ち込むことに成功した。このことは、実験に基づき物理過程を追及するという研究手法を進展させる可能性を有していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度整備を進めた大域的磁場・磁束計測システムを活用し、開発した渦電流解析コードに基づいて本装置の運転シーケンスを改善し、で実現できる磁気リコネクションパラメータ領域を拡大することを予定している。さらに、下流域境界条件を時間変化させた際の軟X線分布計測、分光計測結果に基づき、電子・イオンそれぞれへのエネルギー変換過程の定量評価を実施し、核融合プラズマへの応用指針の策定につなげる。
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